日医ニュース 第973号(平成14年3月20日)

視 点


救急救命士の気管挿管問題

 昨年暮れ,秋田市において,救急救命士が恒常的に救急搬送患者に気管挿管を行っていたことが,「医師法違反ではないか」と秋田市議会で問題になった.これがマスコミに報じられ,法律遵守か命尊重かという論争が始まった.救急救命士法が施行されてちょうど十年が経ったところで,救命士の特定行為(医師の具体的指示による気道確保・輸液・除細動)の拡大を目指して,意図的に問題が浮上して来た感も否めない.日医では,当時の救急担当の坪井栄孝常任理事(現日医会長)が救急救命士法の成立に関わっており,その時から,「救急現場でも患者のために医療行為は医師が行うべき」という主張を続けてきた.
 今回の問題をマスコミは,「救急救命士が挿管できないのは,日医が医師の権域を守るために反対しているからだ」と決めつけ,それを裏付けるかのように偏った作為的な報道を繰り返してきた.
 最近になって,秋田の異常に高い救命率が作為的に作られたものであることが判明し,マスコミの報道にも変化が見えてきた.厚労省研究班の「救急救命士による適切な気道確保に関する研究」(代表・平澤博之千葉大教授)で信用度の高い複数の文献を検証しているが,気管挿管が生存率を上げるというエビデンスはない.また,アメリカ心臓協会のガイドラインには,気管挿管は,「まさに明確に確認された致命的な処置である」と記載されている.
 日医は,国民の生命を守るためには何をすべきかということを常に念頭に置いて熟慮し,行動しており,誤挿管が死に直結する以上,医師が行うべき医療行為であると捉え,この問題を慎重に取り扱っていかなければならないと考えている.現在の全国の救急体制の状況や環境を考えたときに,解決しなければならない問題は山積しており,医療側として,すぐに取り組まなければならないのは,県単位の救急医療協議会の設置と,救急に携わる医師(メディカルコントロール医師を含む)をできるだけ早く,また,多く養成することである.


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