日医ニュース 第975号(平成14年4月20日)

資料版
 予防接種後副反応報告書 集計報告書
(厚生労働省)

 本報告書は,平成12年4月1日から平成13年3月31日までの間に厚生労働省に報告された,「予防接種後副反応報告書」を単純集計し,まとめたものである.予防接種との因果関係や予防接種健康被害救済と直接結びつくものではない.(略)

1.DPT,DTワクチン
 報告されたDPT,DTワクチン接種後の副反応の報告件数は284例(男146例,女138例)で,このうち基準外報告は121件(42.6%)であった.189件(66.5%)が24時間以内の副反応あり,1〜3日85件(30.0%),4〜7日2件(0.7%),8〜14日5件(1.7%),15〜28日1件(0.3%)であった.
 年齢別にみると,0歳児が62件,1歳代が59件,2歳代70件が特に多くみられた.報告された副反応でもっとも多かったのは,接種局所の異常腫脹(肘を越える)で89件(31.3%)であった.副反応の回復率は6.0%であるが,これは回復したという報告の単純計算で,報告時に追加報告のない例がみられた.
 報告時に未回復と回答されたのは,局所の異常腫脹の36件とアナフィラキシー1件,全身じんましん1件,発熱11件,脳炎・脳症1件,けいれん2件,全身発疹6件,基準外30件の88件であった.入院は20件あり,12件は基準内報告であった.アナフィラキシー1件,全身じんましん1件,脳炎・脳症1件,けいれん3件,局所の異常腫脹1件,全身の発疹3件,39℃以上の発熱2件であった.
 このうち,脳炎は3歳の男子で,接種翌日意識障害,けいれんを発症,約1週間の意識障害を認めた.CT・MRIで小脳を中心とする脳炎・出血がみられた.主治医はウイルス性脳炎の可能性があるとコメントしている.
 その他基準外報告のうち,ネフローゼ症候群1件,急性小脳失調症1件が報告されている.

2.麻しんワクチン
 麻しん副反応報告総症例数は35例(男12例,女13例)であった.報告件数は54件となった.8件(14.8%)が24時間以内の副反応あり,1〜3日10件(18.5%),4〜7日14件(25.9%),8〜14日20件(37.0%)15〜28日2件(3.7%)であった.
 年齢別では,1歳代46件,2歳代3件,3歳代4件,5〜9歳代2件であった.副反応の回復率は70.3%であるが,これは回復したという報告の単純集計である.報告時に未回復と回答されたのは,その他の異常反応の4件と基準外報告7件,けいれん3件,全身じんましん4件の計16件であった.
 その他の異常反応としては,1歳男児3日目発症の血小板減少性紫斑病,1歳女児4日目発症の血小板減少性紫斑病があった.
 また,1歳女児例で血球貧食症候群と診断された例では,接種7日目に高熱があり,近医を受診し,加療を受けたが改善せず,20日目に他病院に入院.入院時発疹があり,26日目に骨髄穿刺,リンパ節生検で血球貧食症候群と診断された.発熱持続し,種々の治療に抵抗した.
 また,2歳女児例で接種18日間後より徐々に元気がなくなり,夜間病院を受診し,意識障害( III -200),低体温(35.1℃),徐脈,洞性不整脈が確認されたが,オルガドロン点滴にて徐々に軽快し,翌朝には簡単な言葉を話せるようになった症例があった.

3.風しんワクチン
 報告された風しんワクチン接種後の副反応症例数は29例(男15例,女14例)であった.
 発生日数では29件中19件(65.5%)が24時間以内,4〜7日4件(13.8%),8日以降6件(20.7%)であった.アナフィラキシー,全身蕁麻疹等の即時性全身反応は5件,脳炎・脳症は0件,けいれん0件,注射局所のしびれ1件,血小板減少性紫斑病4件,リンパ節炎3件であった.各年齢別にみると,0歳代5件,1歳代8件,2歳代1件,3歳代2件,4歳代2件,5歳以上11件であった.予後別では,治癒5件(17.2%),入院8件(27.6%)のうち,回復例は6件,後遺症0件,その他4件,無記入12件であった.報告時点で回復していない症例が4件(13.8%)で入院中が2件であるが詳細は不明である.

4.日本脳炎ワクチン
 報告された日本脳炎ワクチン接種後の副反応の症例数は72例(男34例,女38例)で,件数は82件であった.
 最も多い副反応は即時性全身反応で,26件(31.7%)あり,そのうち13件はアナフィラキシー,13件は全身じんましんで,アナフィラキシーはすべて24時間以内に発症していた.次に多かったのは39℃以上の発熱15件(18.3%)で,3日以内に発症していた.
 重篤な副反応である神経系副反応として,脳炎・脳症が2件(2.4%)あり,4〜7日に2件報告された.2件ともMRIなどの画像診断が行われ,1件は急性散在性脳脊髄炎(ADEM)と診断され,他の1件は詳細は不明であるが脳萎縮のみ指摘されている.
 今回も運動障害の報告はないが,その他の神経障害として1件の発症例が報告された.接種2〜3分後,手の震えと脱力を訴え約2週間の経過で消失しているようである.この間,症候の動揺,時に嘔気,腹痛など不定愁訴あり,学校,開業医,病院と転々とし,それぞれにその対応に不満があり,時に自律神経失調症の診断もつけられたが検査所見に異常を認めていない.けいれんの報告は6件(7.3%)あり,そのうち有熱性けいれんは5件で,1件は37.5℃の微熱と一過性の左不全麻痺を伴い,無熱性ではショックと鑑別困難な無熱性けいれんが1件あった.けいれんは多くは全身強直性けいれんで24時間以内,少なくとも3日以内に発症していた.17件(20.7%)は基準外報告であり,軽度の発赤・腫脹などの局所反応は5件,発熱などの全身反応は8件,その他は4件の報告があった.
 年齢別にみると,副反応の多くは3〜15歳の接種年齢層に多く80件(97.6%)あり,接種対象年代に対応していた.
 予後別にみると,その他の神経障害は回復しており,報告時では脳炎・脳症の2件は回復しておらず,1件は入院加療中であった.

5.ポリオワクチン
 報告されたポリオワクチン接種後の副反応症例数は33例(男20例,女13例)で,件数は同じく33件であった.
 日数別にみると,33件中25件(15.2%)が24時間以内,1〜3日9件(27.3%),4〜7日9件(27.3%)であった.
 各年齢別にみると,0歳代17件,1歳代13件,2歳代2件,3歳代1件であった.
 副反応の内訳としては,死亡例が4例あった.2例が乳幼児突然死症候群の診断であり,1例は心筋炎の診断,1例は喘息のある3歳の女児で診断は脱水症であった.麻痺例は7カ月の男児で接種後17日目に,1歳の男児で接種後23日目に見られたと報告されている.その他4例に歩行障害が報告されているが,いずれも回復している.2例に筋力低下が報告され,これも回復している.その他の重症例では脳炎が2例ADEMの疑いが1例報告されている.
 その他の異常反応15件(45.5%)で,0歳代4件,1歳代9件,2歳代2件であった.基準外報告は15件(45.5%)で,0歳代11件,1歳代3件,3歳代1件であった.予後別では,治癒6件(18.2%),入院9件(27.3%),後遺症1件(3.3%),その他3件(9.1%),無記入10件で入院9件のうち,2件は回復していた.

6.BCGワクチン
 報告されたBCGワクチン接種後の副反応件数は122件(基準外報告5件を含む)であった.性別では男74件,女48件といつものように男児が多かった.
 年齢別には,0歳58件(47.5%),1〜4歳35件(28.7%),5〜9歳18件(14.8%),10〜15歳11件(9.0%)と乳幼児の被接種者が多かった.
 副反応の種別では,腋窩リンパ節腫脹64件(52.5%)が最も多く,次いで,接種局所の膿瘍・潰瘍19件(15.6%)が多かった.これに腋窩以外のリンパ節腫脹14件,ケロイド形成(その他の異常反応「その他」に分類)9件が次ぐ.ほかには皮膚結核様病変5件,骨炎・骨髄炎3件が注目されるが,さらに今回は,壊疽性膿皮症,全身播種性BCG感染症が各1例あった.
 腋窩リンパ節腫脹例64件の大半60件が0〜2歳の乳幼児で,そのうち,特に0歳児が40件(62.5%)を占めていた.他では1歳が16件(25.0%),2歳が4件(6.3%),さらに5〜9歳が4件(6.3%)であった.その発生時期は1日〜1カ月が18件(28.1%),〜2カ月で累計48件(75.0%)と,大半がこの時期までに発生していた.遅い者では3カ月を超えるものが6件あった.報告時点までに「回復している」と答えた者が21件,「回復していない」と答えた者が43件であった.経過中に入院した者が10件あった.腋窩以外のリンパ節腫脹14件はすべて0〜2歳児に見られ,また,8例は同時に腋窩リンパ節腫脹をもっていた.その発生部位は大半が鎖骨上窩部およびその近傍,側頸部であった.
 接種局所の膿瘍19件中7件は0〜3歳児,6件が5歳〜9歳,6件が10〜15歳児であり,その発生時期は接種後1日〜3カ月(17件)が大部分であるが,6カ月を超えるものも2件みられた.回復状況については「回復している」が7件,「未回復」が12件であった.
 ケロイド(その他の異常反応「その他」に分類)の9件は,年齢別には5〜9歳に5件,10〜15歳に4件,性別には男児に7件,女児に2件それぞれ見られた.また,7件までが接種後6カ月以上を経過してから発生していた.
 皮膚結核様病変の5件は4例までが0〜2歳で,また,同じく4件までが接種後1〜2カ月で発生していた.2例は接種部位を中心とし,他の部位にも散在する皮疹が記載されていた.
 骨炎,骨髄炎は1〜2歳でみられ,1例は接種後2カ月で,他は6カ月以後に発生していた.部位は全身,膝,胸骨と記載されていた.
 全身播種性BCG感染症とされた例は,2歳児で接種後1カ月後に発熱,リンパ節腫脹,肺病変を呈し,リンパ節生検にてBCGを検出したものである.なお,患者は慢性肉芽腫症をもっていた.


日医ニュース目次へ