日医ニュース 第982号(平成14年8月5日)

健保法等一部改正法案
参議院本会議で可決成立

 健康保険法等一部改正法案は,7月25日午後,参議院厚生労働委員会において審議途中で強行採決,翌26日,参議院本会議で,与党三党によって可決成立された.
 三師会は,7月24日に第2回三師会統合戦略本部を開催し,法案断固反対を確認するなど,積極的な活動を展開していた.にもかかわらず,自民党が,国会対策の権限を強引に行使して強行採決に踏み切ったり,野党欠席のままに本会議で改正法案を成立させたことに対し,三師会は強く反発して,7月26日,厚生労働省において声明(下掲)を発表した.

 健保法改正法案が,六月十四日に衆議院厚生労働委員会で単独採決(強行)されたのを受け,日医は,二十一日に三師会(日医,日歯,日薬)共同で「健康保険法等の一部改正法案の慎重な取り扱いを求める声明」を発表した.改正法案は,同日,衆議院本会議において可決,参議院に送付された後,厚生労働委員会(委員長:阿部正俊氏)に付託されて,七月二十五日の強行採決に至った.

三師会統合戦略本部設置

 この間,これら一連の動きを危惧した三師会は,七月三日に「三師会統合戦略本部」を設置し,今後は三師会が一致団結して行動していくことを決定.以後,数回にわたり会合を持ち,積極的に活動を行ってきた.その様子と,今後の活動状況について以下のとおり報告する.
 三師会統合戦略本部の初会合が,七月十一日,都内のホテルで開催された.当日は,参議院側から宮崎秀樹議員以下八名の国会議員が出席した.
 この本部は,当面する二つの重要課題((1) 健康保険法等一部改正法案 (2) 平成十四年度診療報酬改定の再改定)に三師会協同で対応していくため,坪井栄孝会長を本部長として設置されたものである.
 会議は,石川高明副会長(三師会統合戦略本部事務局長)の司会進行で行われ,出席の国会議員から改正法案を巡る現下の情勢と対応について一通りの説明があった後,意見交換が行われた.
 そして,最後に,国民のとりわけ老後の暮らしと安心を奪う今回の改正法案に絶対反対し,会期末(七月三十一日)に向けて一致団結して行動していくことを確認した.
 戦略本部初会合後,三師会の合同記者会見が,同所で開催された.
 冒頭,石川副会長は,「現在の医療を取り巻く状況を厳しく受け止め,三師会が一致団結して行動していくことを確認した.今後は衆参両議員の先生方と連絡をとりながら,対策を練っていく」と説明した.
 総括を行った糸氏英吉副会長は,「日医だけでなく,三師会が共通の認識をもち,運命共同体として行動していくということを対外・対内に向けてアピールしたかった」と戦略本部設置の意義を強調した.
 これに先立って七月十日には国会議員との懇談会が都内で開催され,衆参の医系議員(十二名)ならびに坪井会長をはじめとする日医役員が出席した.
 そのなかでは,青柳俊副会長が,健保法改正法案ならびに診療報酬の問題点について説明を行った.健保法改正法案については,(1) 特に寝たきりの患者さんの負担が増大する (2) 高齢者にとって限度額を超えた一部負担金の支払いは,後に還付申請ができるとはいえ,極めて重い負担である―と改正法案の問題点を指摘した.診療報酬については,議員からその問題点について一定の理解が示され,日医から中医協の議論に対するバックアップを要請した.
 また,総合規制改革会議の「中間とりまとめ」で,株式会社参入を認めようとしていることについては,坪井会長が,「自民党のこの問題に対するスタンスが見えてこない」と自民党の対応を厳しく批判し,党としての考えを明らかにするよう強く要求した.
 今後,戦略本部は,引き続き,健保法改正,平成十四年度診療報酬改定の再改定に向けて活動を続けていくことになる.

三師会統合戦略本部について
6月11日 (衆)厚生労働委員会 健康保険法等一部改正法案参考人意見陳述 青柳副会長 改正法案に対し意見表明
14日 (衆)厚生労働委員会強行採決
21日 緊急記者会見 三師会共同声明
(衆)本会議可決成立
24日 (参)厚生労働委員会付託
26日 抗議(自民党幹事長・政調会長へ申し入れ)
7月 3日 三師会推薦参議院議員と三師会幹部懇談会
三師会統合戦略本部設置による闘争方針を確認
10日 国会議員と日医役員との懇談会
修正なき改正法案断固反対を主張
三師会統合戦略本部設置
11日 第1回 三師会統合戦略本部会議
修正なき改正法案断固反対を確認するも,日程的に厳しいなかで修正か付帯決議方式かギリギリの協議
三師会合同記者会見
16日 (参)厚生労働委員会参考人招致
櫻井常任理事 再度断固反対を主張
24日 第2回 三師会統合戦略本部会合
25日 (参)厚生労働委員会強行採決
26日 (参)本会議可決成立
三師会緊急記者会見

声  明
 患者負担増を柱とする「健康保険法等の一部を改正する法律案」が,何ら修正されることなく,強行採決で衆・参両院を通過・成立したことは誠に遺憾千万である.
 患者負担増は,医療保険制度に対する将来ビジョンをもたず,これまで適正な運用に対する努力を怠ってきた行政府の失政の責任を患者すなわち国民に転嫁するものである.
 現行以上の患者負担増は,将来の社会保障に対する国民の不安を助長させるだけでなく,国家最大の財産たる国民の生命,健康に重大な影響を及ぼす可能性がある.本質的な議論が十分でないままの法案成立は,国が社会保障の充実に対する社会的使命を放棄する暴挙にほかならない.
 われわれは,終始一貫して患者負担増に強く反対し,署名運動,決起集会,立法府たる国会への働きかけ等を強力に推進してきた.その背景には,真摯に地域医療を支え,何としても国民医療を守るという全国の医療関係者の切実なる思いがある.
 国民の健康を軽視し,極めて短期的な保険財政収支の均衡を最優先した重大なる過ちに対し,政府与党の猛省を強く促すものである.
 合わせて,われわれとしては,このような国民無視の暴挙に対して,重大な決意を持つものである.


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