日医ニュース 第983号(平成14年8月20日)

中医協
平成14年度診療報酬改定の問題点を指摘


 中央社会保険医療協議会調査実施小委員会および総会が,七月三十一日,厚生労働省で開催された.
 調査実施小委員会では,昨年の六月に実施した医療経済実態調査の結果が報告され,これを了承した.
 その主な内容は,介護保険事業に係る収入のない医療機関等をみてみると,一般病院では(医業収入二億一千七百五十六万二千円,医業費用二億二千二百四十九万三千円,収支差額は四百九十三万一千円のマイナス),一般診療所では(医業収入九百六十六万六千円,医業費用七百二十五万八千円,収支差額は二百四十万八千円のプラス)という結果になっている.
 この結果を受けて,青柳俊副会長は,「医療法人,診療所,病院などでは収支差額がプラスとなっているが,そこでは医業収入が下がっているなかで,医療機関が給与費,医薬品費などの経費を削って,ようやく経営を維持している現状があることを理解してほしい」と述べるとともに,この報告書を基に日医としても経営分析を行い,次回の中医協で公表することを明らかにした.
 引き続き行われた総会では,まず,前述の医療経済実態調査の結果ならびに平成十三年度医療費の動向などについて説明を受けた.
 その後,青柳副会長が,平成十四年度診療報酬改定に係る二点(1)手術料の施設基準(特に症例数による基準),(2)長期入院患者の入院基本料の特定療養費化など特定療養費制度の拡大─の問題点について説明を行った.
 (1)では,今回の施設基準を設定する際の根拠となった米国の文献について,(1)その論文のデータがカリフォルニア州に限られたものであること (2)論文自体が,症例数のみの分析では不十分であることを認めている―など,今回の症例件数の導入根拠が極めてあいまいであることを指摘した.
 そして,この基準によって,本来あるべき技術評価が否められるばかりでなく,地域における適切な医療提供が阻害されているとして,その撤回を要求した.
 (2)では,日医が行った「医療療養病床における長期入院患者の実態について」の調査結果に基づいて説明を行った.それによると,医療保険適用の療養病床で,百八十日超の入院患者は現在約十四万人いるが,そのうち,現在の厚生労働省の告示では救われない患者さんが十二〜十三万人いることを指摘.今回の特定療養費導入は,「入院医療の必要性が低いが,患者側の都合により入院しているもの」を対象としたものであるが,処置の受療状況等の実態をみたうえで,「準ずる状態にある患者」の定義を検討する必要があるとした.
 そのうえで,以下の六項目((1)末期の悪性腫瘍 (2)呼吸管理を要する状態 (3)栄養管理を要する状態 (4)術後管理を要する状態 (5)肺炎等感染が持続している状態 (6)小児の長期入院患者)に該当すると医師が判断した場合には,長期入院に係る入院基本料の特定療養費化における除外規定とすべきであるとの意見書を全医科診療側委員名で,中医協に提出した.
 また,青柳副会長は,その他の問題(再診料,外来診療料等の逓減制,リハビリ,消炎鎮痛等処置の逓減制)についても,その解決に向けて努力していくとした.

表:一般診療所(全体)


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