日医ニュース 第984号(平成14年9月5日)
総合規制改革会議「中間とりまとめ」 生命・身体・健康に関しての安易な規制緩和に反対 |
櫻井秀也常任理事は,先に出された総合規制改革会議「中間とりまとめ」のなかの規制改革特区について,次のように見解を述べた. |
規制改革特区とは,特定地域において,規制緩和を行い,それによって経済の活性化を図ることを目的とするものである.「中間とりまとめ」には,特区の選定基準が示されており,外交,防衛,刑法に関するものなどは,規制緩和特区の対象外とされている.これは当然のことであろう.しかし,そのなかに「生命・身体・健康(中略)等に関する規制であるという理由によって対象外とすべきでなく(後略)」と書かれている.
これは,「生命・身体・健康」に関する規制を緩和して,経済の活性化を図ることができるなら,それによって「生命・身体・健康」を犠牲にしても構わないという発想である.このような考え方には,断固反対せざるを得ない.
国民の健康や生命に関する事柄を安易に規制緩和していいのだろうか.
現在,中国から輸入された「やせ薬」と称する「健康食品」によって多数の健康被害者と死者が発生している.これは二年ほど前に薬事法で扱う医薬品の範囲を見直すという規制緩和が行われた結果である.このような死者まで出るという健康被害は,経済界の圧力で,薬事法の規制緩和をしたために,起こるべくして起こったといえる.私は当時,食品・医薬品の区分の見直しに関する委員会に出席しており,従来の薬事法の規制の存続を強く主張したが,この見直しは,すでに閣議決定されているので見直さざるを得ないということになり,その結果として,国民は重大な健康被害を被ることになった.同じことを「特区」でやろうとしている.このようなことに賛成はできない.
また,高度先進医療についても触れている.これは現在全国で千五百程度あるが,医療に占める部分はわずかであり,これらを緩和しても経済活性につながるとは思えないし,ほとんど使われていないものも多く,むしろはずすべきだと考えていたものもあるくらいである.外国人医師の資格認定や治験の問題は,国全体として行うべきもので,特定の地域で勝手に決めることはとうてい容認できない.
広告規制の問題も,今回ある程度規制緩和されたが,残された規制部分は,国民の安全を守るためにあることを忘れてはならない.
国民の「生命・身体・健康」を守るために定められた規制を,経済活性化の名のもとに,勝手に規制緩和することは絶対に許されない.日医としては,地区医師会と密接な連絡を取りながら,この問題に積極的に対応していきたいと考えている.