日医ニュース 第987号(平成14年10月20日)
電子カルテを中心にシンポ |
第三回診療情報提供の環境整備のための講習会が,九月二十八日,日医会館大講堂で開催された.
櫻井秀也常任理事の司会のもとで開会.冒頭に西島英利常任理事が,「診療情報の提供に関する指針」改定の最終報告が八月に取りまとめられ,十月二十二日の臨時代議員会に同改定案を提案し,承認されれば,平成十五年一月一日から新しい指針として施行される見通しであると説明した.
つづいて,坪井栄孝会長が,「国民皆保険を堅持するためには,われわれの持っている医療の内容を納得いくまで開示し,患者が情報を把握したうえで,自分の医療を選ぶという自主性を醸成する必要がある.診療する側からすると,患者から情報を得て,正しく選ばれる医療を提供する形になる」と述べ,国民が満足する医療の情報ネットワーク化,もしくは診療情報提供の一方法論としての電子カルテの存在にふれた.
次に,熊本一朗鹿児島大学医学部医療情報管理学教授による基調講演「電子カルテとは―診療情報提供にどう役立てるか―」が行われた.熊本氏は電子カルテが問題解決への効果的な対応策,システム化と期待されていることに鑑み,その定義,従来の紙のカルテと比較しての利点,種類などを説明した.電子カルテ普及の不可欠な要件の一つとして,電子化された個人情報のセキュリティーの確保,プライバシーの保護を挙げ,読みやすく,正確で,安全な電子カルテを利用することで,(1)医療の効率化(2)医療の質的向上(3)患者への診療情報提供―という利点があることを強調した.
引き続き,シンポジウム「電子カルテ利用の実際と今後の課題」が開催された.
原寿夫原内科医院長は「内科診療所の立場から」と題して,電子カルテ導入の目的は,(1)かかりつけ医機能の推進(2)受診者への診療情報の提供(3)他機関との情報共有化―の三点であるとした.
楊浩勇スマイル眼科クリニック院長は「眼科診療所の立場から」と題して,電子カルテの直接的な利点と間接的な利点を説明した.
石原照夫NTT東日本関東病院呼吸器科・肺外科部長は「総合病院の立場から」と題して,NTT東日本関東病院の総合医療情報システムを紹介した.
山本隆一大阪医科大学病院医療情報部助教授は「セキュリティーについて」と題し,セキュリティーやプライバシー保護には利用者認証が最も重要であると強調した.
その後,フロアとの活発な質疑応答ののち閉会した.参加者は三百十七名.