日医ニュース 第989号(平成14年11月20日)

ネパール王国 Khopasi Report
コパシ便り(92)


ネパールに王政復古
 十月四日金曜日夜十時半,国王が突如テレビで演説.ネパールの大事件は,いつも金曜日の午後である.国王がデウバ首相を解任,現内閣総辞職を命じ,国王自身が全権を掌握することになった.
 デウバ首相が,十一月十三日に予定していた国会総選挙が実施不可能なため,国王に一年の延期を申し出たことを受け,国王はデウバ首相に政権運営の能力なし,と演説のなかで明言した.六月に国会を解散したまま総選挙を実施できず,テロリストの問題も解決できず,閣僚,役人の腐敗が蔓延し,国民の生活は少しも改善しない.多くの庶民は,今回の国王の決定を歓迎している.

ネパールの「多政党制民主主義」
 一九九〇年に絶対王制から学生,インテリ層が中心となって「民主主義」を勝ち取ったネパールであったが,十二年を経て,再度王制に復古せざるを得なくなった.ネパールの「民主主義」はなんだったのか?
 頻繁に交代し,国民のための政策決定,実行能力のない政府,勢力争いに明け暮れる多くの政党,自分の利益ばかり追求する大臣,役人,脱税が日常茶飯の富裕層,八五%を占める農民の変わらぬ貧困,特に地方農村での教育,医療,衛生,インフラの極端な開発の遅れ.社会に平等と公正をもたらし,国民一人ひとりに等しく希望を与える真の民主主義は,まだ見えない.


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