日医ニュース 第992号(平成15年1月5日)

青柳副会長
厚生労働省試案に対する日医の見解を公表


 厚生労働省は,昨年の十二月十七日,医療制度の抜本改革に向けた試案を公表した.
 この試案は,健康保険法の附則に平成十四年度中に「基本方針」を策定することとされている,(一)保険者の統合及び再編を含む医療保険制度の体系の在り方,(二)新しい高齢者医療制度の創設,(三)診療報酬の体系の見直しについて,広く各方面の議論に供するための「たたき台」として取りまとめられたものである.
 「医療保険制度の体系の在り方」については,制度見直しの方向として保険者の再編・統合,新しい高齢者医療制度を含む制度改革の二点が挙げられている.保険者の再編・統合に関しては,被用者保険,国保,それぞれについて保険者の財政基盤の安定を図り,保険者としての機能を発揮しやすくするため,都道府県単位を軸とした再編・統合を進めるとしている.新たな高齢者医療制度については,「制度を通じた年齢構成や所得に着目した財政調整を行う案」と「後期高齢者に着目した保険制度を創設する案」の二案が併記されている.
 「診療報酬体系の見直し」については,(1)医療技術の適正な評価(2)医療機関の運営コスト等の適切な反映(3)患者の視点の重視―という基本的な視点に基づいて見直しを進めるとしている.
 これに対して,日医では,同日,記者会見を開催し,青柳俊副会長が厚生労働省試案に対する日医の考えを述べた.
 「医療保険制度の体系の在り方」については,(1)制度設計の明確なタイムスケジュールが明白でない(2)各保険者間で保険料も大幅に異なり,保険料の賦課方法も被用者保険と国保では大きく異なるという現実を無視して,一気にリスク構造調整を図ろうとしている(3)国民は,自分がどれくらい負担すれば安心して医療を受けられるか知りたいはずなのに,その視点が欠けている―などの問題点を指摘した.
 「診療報酬体系の見直し」については,(1)経済的な政策誘導が四月の診療報酬改定でも行われたが,それをさらに強化しようとしている(2)患者選択の名を借りて,特定療養費制度の拡大を図ろうとしている(3)医師の経験年数等の勘案や診断群分類による包括評価などエビデンスに基づかないものを無理に導入しようとしている―などと批判した.
 今後の予定として,青柳副会長は,政府の基本方針取りまとめに向けて,日医として具体的な案を示すなど積極的な活動を展開していくことを明らかにした.


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