日医ニュース 第994号(平成15年2月5日)

厚生労働省との意見交換会
厚労省試案を痛烈批判


 昨年の十二月十七日に公表された「厚生労働省試案」に関する厚生労働大臣との意見交換会が,一月十六日,厚生労働省で開催された.
 この会は,本年三月に予定されている医療制度の抜本改革に関する基本方針の取りまとめに向けて,厚生労働省試案に対する関係団体の意見を聞くために行われたもので,当日は四師会(日医,日本歯科医師会,日本薬剤師会,日本看護協会)がそれぞれ意見を述べた.
 日医からは,糸氏英吉・青柳俊両副会長,櫻井秀也常任理事が出席した.
 冒頭,坂口力厚生労働大臣から基本方針取りまとめへの協力をお願いする旨のあいさつがあった後,糸氏副会長が医療制度改革に関する日医の総論的な考えを説明した.そのなかでは,「現状を把握し,社会保障制度のあるべき姿について話し合うことが先決であるのに,現在の議論は財源論のみとなっている」と現状を厳しく批判したうえで,厚生労働省に対しては,「少子高齢社会に向かっていくなかで,国民に安心感を与えるためにも,国民の健康と安定した生活を保障する施策を明確に示すべきである」と要望した.
 引き続き,各論については,青柳副会長が説明を行った.まず,厚生労働省の試案について,「財源の確保と配分,保険制度の安定的運営という視点のみしか触れられていない」と批判するとともに,「抜本改革を行うためには,国民の医療ニーズをいかにして汲み取り,医療提供体制をどのように構築していくかという,多面的で連続性のある議論を行う必要がある」と指摘した.
 診療報酬体系の改革については,これまで日医が提言してきた基本理念を説明したほか,去年四月に導入された手術料の施設基準などを例にあげて,根拠に基づかないものが余りにも無定形に導入されすぎていると批判した.
 また,特定療養費の名のもとに患者さんの負担を増やそうとしていることに警戒感を示し,患者さんの医療へのアクセスを阻害しないような配慮を求めた.
 医療保険制度の安定的な運営に関しては,保険者の統合再編は重要なことであるが,それには明確なプロセスが必要であり,段階的に実現可能なものから実施していくべきであると強調.最優先課題は,医療保険のなかで今後高齢者をどう取り扱っていくかにあるとして,改めて日医の提案する独立型の高齢者医療制度創設に対する理解を求めた.
 その後,大臣・副大臣から,「現在の医療保険制度に関する日医の評価」「予防給付の範囲」等について質問がなされた.これに対して櫻井常任理事は,「現在の日本の医療は安い医療費で世界一の健康寿命を維持しており,この結果を伸ばすような改革をお願いしたい」と要望.また,青柳副会長は,予防医学の範囲については疾病予防・疾病管理を念頭においていることを明らかにするとともに,予防医学にどのような費用対効果があるかの検証を行ったうえで保険適用の拡大を図るべきであると指摘した.


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