日医ニュース 第997号(平成15年3月20日)
視点 |
今こそ医師会の自浄作用活性化をすすめよう |
かつては医の倫理といえば,他から強制されるものではなく,医師個人が自らを厳しく律していけばそれで良いとされてきた.しかし,今日それでは済まされない時代に変貌しつつある.
まず,国民皆保険制度の普及とともに,かつて想像もできなかったたくさんの国民が,医師とともに医療に参加するようになってきた.
一方で,大変な情報化時代が進行し,当然のことながら医師の言動,行為が衆人の監視の眼にさらされることになり,ごく一部の不正な悪徳医師の行為でもほとんどの医師がそうであるかのように,ゆがめられた報道が公然となされる時代となっている.不幸なことにそのことが医師と患者さんとの信頼関係をゆがめ,医療への大きな障害になっていることも事実である.ことここに至れば,医師の職業倫理の実践は個人の問題だとして放置しておくわけにはいかなくなってきたのである.
現在,わが国においては,医業における反倫理的行為への対応としては,今日まで長い間,医師法・医療法・医道審議会・健保法等々,行政によって他律的に対応されてきたというのが実情であろう.
それに反して,医師側の自律的対応というものはほとんどないに等しいか,あっても極めて消極的なものでしかなかった.裁定委員会しかり,最近ようやく医の倫理綱領の議決,患者相談窓口の設置が実現したに過ぎなかった.昨年よりようやく医師の職業倫理規定の作成,自浄作用活性化委員会の立ち上げなど本格的な実践段階に入ったといってよいのではないかと思う.
このようにして,われわれの主張・要求,例えば診療報酬,税制,医療制度改革などに対する国民,マスコミの理解が得られるよう医師会が自らを律し,厳しくしている姿勢を国民に見えるよう新しいアクションを起こしていかねばならない.
最後に,最も重要なことは,都道府県医師会での自律的自浄作用活性化への対応である.会員一人ひとりと直に向き合っている都道府県医師会の協力なしには医政活動や,医師の生涯研修もまったく進まないわけであり,この観点からすれば都道府県医師会の対応は,日医の生死を握っているといっても決して過言ではないと思われる.
お上による国民医療への一方的支配からの脱却こそ,二十一世紀の重要な日医の課題となることは間違いないと思われる.