日医ニュース 第997号(平成15年3月20日)

勤務医のひろば
女性にも働きやすい環境を


 私は現在,企業の専属産業医として働いており,厳しい経済状況下の労働者の疲労やストレスを日々感じている.
 近年策定された「心理的負担による精神障害等の労災認定」「脳・心疾患の労災認定基準」や「過重労働による健康障害防止総合対策」は,医師にとっても大事な問題であろう.日本の勤務医の労働環境や疲労やストレスやその性差について関心を持っている.
 一九九五年に日本女医会が行った約二万八千人(有効回答約八千人)の女性医師調査では,性差を感ずるのは主に妊娠・出産,育児であり,他分野ではほとんど性差を感じていなかった.医師としての満足感は高く,継続希望者は九割に上る.しかし,家庭と仕事の両立が大変と回答した人は六割であり,依然として女性の家庭での役割が重いことが分かる.
 他の調査でもほぼ同様な結果であり,妊娠・出産,育児をどのように個人レベル,病院や大学レベル,国レベルで支援するかが問われている.医師の職務特性から,労働基準法の適応が困難な点もあり,現行のシステムでは,妊娠か仕事か悩んだり,相当な覚悟で両立を目指すという個人レベルでの対応を迫られている.
 希望として多いのは,母性保護に関する法律の遵守,夜間および病児保育を含めた保育施設の整備,離職後の再教育や再就職,ワークシェアリングなどの多様な雇用,労働契約の整備,夫のサポートなどである.
 海外では,医師のストレスと健康に関し,さまざまな大規模な調査が行われており,米国のWomen Physicians' Health Studyでは,労働量,裁量権,仕事のストレス,当直数,性差別,セクハラは女性医師の満足度を下げ,時間当たりの収入が良く,育児時間が少ないほど満足度が高いと報告されてい
る.
 わが国でも医師の労働と健康調査を行い,両性にとって働きやすく生きやすい労働環境の整備が必要であると思われる.
(NTT東日本首都圏健康管理センタ東京健康管理センタ所長 荒木葉子)


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