日医ニュース 第998号(平成15年4月5日)

第3回自浄作用活性化委員会
自浄作用の方向性を提示


 第三回自浄作用活性化委員会(委員長・石川育成岩手県医師会長)が,三月六日に日医会館で開催された.本プロジェクト委員会は,平成十四年十二月十九日の坪井栄孝会長の諮問を受けて,三回にわたって検討を重ねてきたものである.
 冒頭,坪井会長より,「本日,石川委員長より『報告書』案が出されたが,非常にまとまりのよいものになっている.全国的にこの問題に関しての関心・評価は高いので,いっそうの討議をお願いしたい」とのあいさつがあり,引き続いて,担当の糸氏英吉副会長が,「『報告書』案をより精緻なものとし,次年度の常設委員会に向けての抱負を盛り込んでほしい」と述べた.
 資料説明の後,石川委員長が各委員から出された意見を基に作成した「報告書」案をたたき台にして,フリートーキングが行われた.
 「学術専門団体としての医師会の責任」「患者と医師間の情報開示の問題」「医師の倫理の問題」「医籍登録と医師会同時入会のメリット」「反省なき医療事故リピーターの問題」―など,さまざまな意見が交わされ,当日の委員会は終了した.
 報告書「自浄作用活性化を目指した具体的方策―その方向性について―」は,当日の委員の意見を取り入れて,内容に若干の修正を加えた後,三月十八日に石川委員長より坪井会長に答申した.(下掲)
 糸氏副会長は答申当日の記者会見で,「国民に理解を得るためには,医師会自ら自浄作用の方策を作り,実践するという具体的な取り組みが重要である.都道府県医師会,郡市区医師会間で迅速に情報を伝達し,意見交換を行って,互いに共通認識を持つ必要がある」と述べ,報告書の主旨を説明した.
 本委員会は,平成十五年度に常設委員会となり,引き続き具体的方策を検討していく予定になっている.

自浄作用活性化を目指した具体的方策
―その方向性について―

(1)自浄の啓発
 基本的には会員個々人が自ら「医の倫理」を認識し実践すべき問題である.
 しかし,現状を見れば,日本医師会・都道府県医師会・郡市区医師会も共通認識を持って関与しなければ活性化は進まない.もとより大多数の会員は善良な会員である.今後,組織としてあらゆる角度からその活性化への方策について具体的に検討する.
(2)自浄作用活性化の方策
 不正行為による行政処分や医の倫理に反する行為については,これを重く受け止めなければならない事は当然である.
 また,会員資格は会員にとって欠くべからざる重要なものであり,除名処分には慎重を期すべきである.しかし,一握りの不正会員の行為によって被害を蒙る多くの善良な会員の不利益を考慮すれば,行政処分確定以前も含めて,組織として除名又は何らかの制裁もやむを得ない場合がある.
 また,医療事故防止には,常に医療の質の向上を目指す生涯教育の徹底が必要である.医事紛争裁判においては事故発生当時の医療水準が基準となることも会員が強く認識しなければならない.
 基本的には,不正行為と医療事故は区別し,その対策について今後慎重に検討する.
(3)誤った報道に対する対応
 事実に反した報道に対しては,その都度厳しく報道根拠について明示を求めることは当然であり,同時に医師会独自の調査も必要である.
 報道が誤ったものであることが明確になった場合の抗議及び謝罪広告の要求は当然である.場合によっては会員及び組織の名誉のために,名誉毀損などの法的手段も考慮すべきである.
 また,正確な報道を求めるために,マスコミに対する正しい情報の提供やモニタリングなどのチェック機能も必要である.
 具体的方策については,あらゆる角度から検討する.
(4)非会員問題
 国民には医師会員か非会員かの区別がつかない.不正行為にしろ医療事故にしろ,報道される当事者が非会員の場合も相当数あるはずである.
 一方,医師会費の自己負担によって勤務医退会者も多くなりつつあるなか,より良い医療を提供するために,医籍登録と同時入会することによって共に自浄作用活性化に取組むことが可能になる.このことの是非についても,勤務医の意見を集約しつつ議論を進める必要がある.


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