日医ニュース 第998号(平成15年4月5日)
日本医師会市民公開講座 海外旅行と感染症をテーマに |
「海外旅行と感染症」をテーマとした日本医師会市民公開講座が,三月九日,日医会館大講堂で開催された.
雪下國雄常任理事の開会に引き続き,坪井栄孝会長(櫻井秀也常任理事代読)が,「本日のシンポジウムで感染症に対する正しい知識を取得し,楽しい海外旅行をしてほしい」とあいさつした.その後,四人のシンポジストによるシンポジウムが行われた.
岩本愛吉東大医科学研究所教授は,特に注意を要する疾患として熱帯熱マラリアを挙げ,専門病院への早期の受診が必要とした.また,五十代以下の日本人のほとんどがA型肝炎抗体を保有していないため,海外旅行の際には予防接種を受けるべきであると強調.さらに,旅先での性感染症への注意を呼びかけた.
甲斐明美東京都立衛生研究所微生物部細菌第一研究科長は,旅行者下痢症は旅行者の半数以上がかかり,その主な原因は飲食物にあると説明.海外で特に注意したい食べ物として,水や生もの,また,忘れがちであるが氷に注意してほしいとした.
木村幹男国立感染症研究所感染症情報センター室長は,海外旅行では,特に昆虫やダニ,狂犬病を引き起こす動物に気をつけるべきと指摘.病気を予防するには,世界のどの地域でどんな感染症が流行しているか,どのような環境や時間帯に感染しやすいか事前に知識をもって行くことが重要であるとした.また,トラベルクリニックが国内で整備されることに期待を寄せた.
大利昌久海外邦人医療基金顧問は,ひとりで長期間旅行する者は感染リスクが高く,特にこのような人は必ず予防接種をすべきであると指摘.どんな予防接種をするかはかかりつけ医とよく相談してほしいとした.さらに海外旅行をする際には,事前にその国の医療事情を把握しておくことも必要と指摘した.
なお,今回の市民公開講座の模様は,四月二十六日(土)午後十一時三十分からNHK教育テレビ「土曜フォーラム」で放映される予定となっている.
※この市民公開講座の資料として使われた日医感染症危機管理対策室監修の「海外旅行必携ハンドブック」を入手希望の方は,FAXで日医地域医療第三課(FAX:03-3946-2684)に申し込みされたい.