日医ニュース 第999号(平成15年4月20日)

日本医学会100周年記念総会祝典
皇太子殿下ご臨席のもと厳かに挙行


 日本医学会百周年記念総会祝典が,四月五日午後四時より,福岡サンパレスの大ホールにて,皇太子殿下の行啓を仰ぎ,開催された.
 冒頭に荒谷俊治指揮,九大フィルハーモニーオーケストラによる,この祝典のために作曲された「新大学祝典序曲」(廣瀬量平作曲)の演奏が行われた.
 平野実副会頭の開会の辞の後,森亘日本医学会長があいさつし,百年にわたる日本医学会の歩みに触れるとともに,本年が九州大学医学部創立百周年にもあたることに言及した.続いてあいさつに立った,杉岡洋一会頭は,総会の基本理念として,人間科学の視点が今後も重要であることを主張した.
 その後,皇太子殿下よりお言葉があった.(下掲)
 来賓祝辞に移り,遠山敦子文部科学大臣の祝辞に引き続いて,坪井栄孝会長が祝辞を述べ,「分子生物学や発生生物学など日進月歩の先端医療に対して,医師は絶えず倫理的観点から問いかけていく必要があり,医学・医療の諸課題に積極的に取り組み,貢献しなければいけない時代になっている」と強調した.
 麻生渡福岡県知事の来賓祝辞の後,片山仁副会頭が閉会の辞を述べ,皇太子殿下,来賓が退席され,祝典を終了した.
 祝典後に,上田閑照京都大学名誉教授による記念講演「人間としての生と死」が行われた.上田氏は,閉塞状況にある現代社会のなかで,人間が自覚的に生きていくことの大切さを強調し,聴衆に感銘を与えた.

皇太子殿下お言葉

 日本医学会百周年記念総会祝典が,多くの医学関係者の参加のもとに開催されることを,誠に喜ばしく思います.
 日本医学会総会は,明治三十五年に第一回目に当たる日本聯合医学会が開催されて以来,今回で百周年という大きな節目を迎えられております.
 日本の医学は,この百年の間に大きな進歩を遂げました.
 二十世紀初頭には,伝染病の流行や公衆衛生の不備のため,平均寿命はまだ五十歳にも達していませんでした.その後の予防接種や抗生物質の普及,公衆衛生の整備,さらに診断技術の進歩などには,目覚しいものがあります.近年は,高度な医療技術により,かつては難病といわれていた病気でさえも救命できるようになり,国民は大きな医療の恩恵を受けています.そして,今では日本は世界一の長寿国になりました.
 ここに,これまで医学の発展に尽くしてこられた関係者の努力に対し,深く敬意を表します.
 二十一世紀には,少子高齢社会に対応した新生児医療や老人医療のますますの充実と,さらなる先端医療の発達などが期待されます.ヒトゲノムも,近く,ほぼ完全に解読されると聞いています.他方,急速な先端医療の発達は,例えば遺伝子技術の導入に際しての倫理面の問題など,新しい課題も生み出しています.さらに,患者と医師相互の信頼関係のもとに,患者の立場に立った医療が行われることも,とても大切だと思います.
 この点からも,信頼に足る,質の高い医療を目指して,人間科学と医学・医療という重要なテーマを議論するこの総会は意義深いものであり,その成果が,アジアの交流拠点である福岡から,世界へ大きく発信されることを期待します.
 二十一世紀最初に行われる総会に当たり,日本医学会が人々の健康と福祉の増進のために,よりいっそう貢献していかれることを願い,記念祝典に寄せる言葉といたします.


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