日医ニュース
日医ニュース目次 第1009号(平成15年9月20日)

勤務医のページ

座談会1
─勤務医と医師会活動─

 日医勤務医委員会では,坪井栄孝会長からの諮問「勤務医と医師会活動」について,現在,答申作成に向けた検討を続けている.今回の座談会は,各地域のさまざまな立場の勤務医の意見を,この答申に反映させるべく企画されたもので,4回にわたって,その内容を紹介していく.

勤務医と医師会活動(写真) 池田 本日はお忙しいなかをお集まりいただきまして,ありがとうございます.
 「勤務医と医師会活動」というテーマで座談会を企画しましたので,よろしくお願いいたします.
  先生方には,医師会活動をどのようにとらえられているかということを,遠慮なくご発言いただきたいと思います.

勤務医にとっての医師会とは

 池田 それでは,はじめに,勤務医が医師会をどう認識しているかということからお話しいただきたいと思います.
 大谷 私の場合は,県立病院なので,地方公務員であるということが,実は医師の前に先行するんです.つまり,組織のなかに安住する面があって,なかなか医師会の方までの活動に至らない.
 しかし,医師のなかに占める勤務医の割合が大きくなると同時に,何とか組織化をしながら力を結集して動いていくには,勤務医が医師会で果たす役割の比重を高めていくことが必要だと認識しております.
 内山 私自身,医師会は,医師にとって大事な組織だと思います.それは専門分野,経営母体が違う医師をすべて集めた組織は医師会しかないからです.
 ただ,医師会組織そのものは,開業の先生方中心に運営されているという感は拭えないと思います.医師会の役員の比率を見ても,新潟県では勤務医の比率が高い方ですが,全国的には,勤務医の比率ほど役員がおりません.
 医師会をリードしている方々にお願いしたいのは,勤務医が置かれている状況に関心を持ってほしいということです.勤務医は,過重労働,医療安全等で,高度な責任を課せられて働きづらくなってきております.
 それは開業医の増加につながって,A会員の方々の医業経営に直結した事態になってくるわけです.また,中堅クラスの医師が開業すれば病院機能が低下しますので,医療連携にも障害を来してくることにもなります.
 望月 岩手県の場合,二年ぐらい前までは県の方で医師会費を負担していて,県立病院に勤務すれば自動的に医師会に入るような仕組みがありましたが,公費での医師会費の負担はなくなり,今は自己負担となりました.
 市の医師会や県医師会は,医療連携の問題などで非常に必要度が高く,市医師会,県医師会には加入するけれども,日医とは接点がきわめて薄く,日医までは加入しないという人も何人かおります.
 白水 公的病院だと,身分が保障され,いざとなれば開業すればいいというようなところもあって,組合もできにくいし,医師会にも入らなくてもいいと思う若い人が多いです.入っても何のメリットもないと考える人が多いと思います.
 公的な病院は,大学からの派遣医が多く,どうせ一時的なものだからということで参加しませんから,医師会に対してあまり興味を持たないという部分もあるかと思います.
 私は,北九州市立若松病院勤務のときに,医師会長に誘われて医師会活動に参加しました.他の職種の先生方と知り合いになれますし,非常に病診連携がやりやすくなって,メリットは大きいと感じましたが,その辺のところを勤務したての人たちに理解させる接点がないという気がします.
 リー 私もやはり勤務医であったときには,医師会を自分とは関係のないものと考えておりました.医師会は,単なる開業医あるいは病院の責任者の方々の集まりでしかないような感覚があったかと思います.
 今は開業して医師会に入り,評議員や読影委員などをやっておりますうちに,やっと医師会の活動内容,方向性が実際にわかり,区民の方々にも貢献しているという実感も伴ってきました.しかし,勤務医時代にはそういうようなきっかけもなかなかありませんでした.
 勤務医と医師会との関係を密接にしようと思うならば,勤務医にも,医師会とは何を目指し,勤務医に何を期待しているかなど,目標,目的を明らかにするとともに,それにより勤務医はどのような貢献ができるのか,あるいはどういうメリットがあるのかなどをもう少し明確にしていただきたいと思います.そうすれば,医師会を理解しやすくなると思われます.
 白水 少しアピールが足りないのではないかと思います.勤務医のときに,医師会や勤務医会に参加する機会は少なかったような気がします.そういう面で,例えば,入会案内書みたいなものを積極的につくって,アピールするという部分も必要かと思います.
 大谷 日医が,私たち勤務医の置かれている状況について,国に対してきちんともの申していって,それを若い勤務医にアピールしていくと,新たなパワーが生まれ,新たな方策が出てくると思います.

医師偏在への対応策

 池田 次に,医師偏在についてお話をいただきたいと思います.偏在というのは,地域性の偏在,診療科別の偏在,時間的な偏在もあると思います.
 望月 岩手県には県立病院が二十七あり,そこが地域医療を担い,へき地医療に携わっています.われわれの病院には,研修医を含めて百二十名の医師がおりますけれども,診療応援を非常に頻回にやっています.日常の診療で手一杯ですが,さらに努力して地域医療部が中心となり,診療応援をしています.県全体の医師不足を少しでも補おうというもので,診療応援を積極的に行うことを目標にしています.
 大谷 私のところも県立病院で,今年度からそうした地域医療支援機能を自治医大卒業生を主体に作りました.公的な自治体病院であるならば,診療所と有機的につながるような形が必要で,その仕組みを作っていかなくてはならないと思います.
 リー 医師会で,ある程度オールマイティーに診れるというドクターをつくっていく必要があるのではないかと思います.また,アメリカ式に,開業医が病院に入り込むというようなシステムで医療連携を広げていかないと,うまく進まないのではないかと思っております.
 内山 医師偏在,医師不足の対策として,いろいろな科や経営母体の病院を束ねている医師会の役割というのは,これからますます重要になると思います.その偏在の是正ということは,間接的には過重労働の改善ということにつながりますので,医師会がもっと力を発揮してアピールしていけば,若い勤務医の目も少しは医師会に向くのではないかなと思います.
 望月 来年度からの臨床研修の必修化に伴い,今までの大学中心の研修から,地域医療を担っているわれわれ第一線病院で研修をする機会が増えることになるわけです.
 われわれとしては,二年間の研修に地域医療の研修が必ず入ってきますので,そういった研修と後期研修を充実させて,自前で医師を育成したいと考えています.そうした人たちを育成しながらも地域に入り込んでいって,医師の交流をやっていければという構想を持っています.要するに,大学から医師をもらうのではないという感覚になってくるのではないかと思います.

出 席 者

(司会)
池田俊彦(日医勤務医委員会委員長・福岡県医師会副会長)
内山政二(国立療養所西新潟中央病院整形外科医長)
大谷恭一(鳥取県立中央病院医療局長)
白水明代(小倉第一病院副院長)
望月 泉(岩手県立中央病院消化器外科長)
リー啓子(リーメディカルクリニック院長)
星 北斗(日医常任理事)

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