日医ニュース
日医ニュース目次 第1013号(平成15年11月20日)

勤務医のページ

座談会3
─勤務医と医師会活動─

 勤務医座談会「勤務医と医師会活動」第3回目の今回は,勤務医の長時間労働・過重労働に関する現状ならびにその解決策についての議論の模様を掲載する.

医療連携の推進

勤務医のページ 座談会3 ─勤務医と医師会活動─ 池田 医師偏在のために,いろいろ工夫しているなかで労働過重が起こっているという要素もありますが,必ずしもそうではなくて,勤務医の長時間労働,過重労働が常態化しているということがあります.その辺はどう解決したらいいのか,医師を増やすしかないということになりますか.
 内山 基本的には,医療連携を有効に進めていかないとだめだと思います.
 一例を挙げますと,私の知る病院では,外来で紹介状のない方は三時間待っても仕方がないという態度で診ています.いくら苦情が出ても,紹介状と予約の方優先です.
 というのは,外来で勤務医がくたくたになる状況を何とかするためには,プライマリの方は診療所もしくは小さな病院で診ていただきたいという考えからです.そこは地域の基幹病院なものですから,入院患者の手術や処置が優先だということで病院を挙げて取り組みまして,少し外来で浮いたエネルギーをそっちに注ぐということです.
 実際,見ていますと,その病院からの学会発表は増えてきていますし,医師は非常に生き生きしています.それには相当摩擦が起きることも承知のうえで推し進めていった結果,そうなっています.医療連携をうまく進めれば,少しは改善の方向へ進むというよい例です.
 望月 今,大病院に関しては,国の政策誘導で急性期病院にならざるを得ないということで,われわれの病院も急性期加算を受けています.紹介率三〇%以上とならなければいけないわけですから,医療連携室を作り,とにかく医療連携を徹底してやるということと,逆紹介ですね.診療が終わった患者さんをすべて開業の先生に戻すことを徹底して,院内に掲示をしたり,患者さんのご理解をいただいてやっているわけです.このように医療連携をかなり密にしても,ものすごく過重労働になっています.
 というのは,夜間でも救急車がどんどん入ってきて,今までは,当直の次の日も普通に手術をしたこともあります.しかし,とてもこれではできないということで,院長命令でこの五月から,当直明けた次の午後は絶対休ませるという厳命が出ました.
 二〜三日の入院でも,入院診療計画書,退院療養計画書等の作成をしなければならない書類が増えてきて,ほとんど夜九時,十時までかかっているような現状で,仕事量はますます増えています.外来診療はスムーズになってきている分,救急外来と入院の患者さんの回転の速さが作業量を増やしています.看護師も業務が非常に増えてきていて,これが急性期病院の現状だと思います.

チーム医療の充実

 白水 市立病院は,とにかく医師に何もかもかかってくる.点数をもらうために,同意書,計画書といったものを全部書いていると,結構時間を取ります.とにかく雑用がたくさんありまして,そういうところを少し整理して,医師でなければやれない仕事以外を極力減らす方法をもう少し考えて,チーム医療を整えたほうがいいと思います.
 今,うちの病院は,紹介状や返事とか,あるいは入院時の診療計画書など,ほとんど自動的にコンピューターで出てきて,二〜三行書けばいいぐらいになっています.そういう書類仕事が,今の病院に変わってから格段に減りました.スタッフを鍛えて,人間の使い方,病院の人員の配置を根本的に考え直せば,できるのではないかと思います.
 望月 プライベートホスピタルだとそれができるんですけれど,公立病院は定員制があって,難しいのです.現在,要望しているところです.アメリカは,手術所見も全部レコーダーに録音して,タイプで打ちますね.
 リー 勤務医として働いていたときは,夜中の当直の翌日でもフル回転という状態で,体力的に非常に限界に近かったと思います.そのときにいつも考えていたのは,一緒にチームとなって働いてくれる人がいれば,お互いに調整もできたのではないかということです.
 また,勤務医の場合,特に,入院病棟において,優秀な先生のところには患者さんが集まり,その方だけが忙しいということがよくありました.医師の能力の偏在により,ある人にだけ負担がかかるというのは,今までも経験をしたことです.
 医師の能力の問題は,連携の場合でもいえることです.非常に優秀な開業医もいるわけですが,残念なことに能力に幅があるため,勤務医の先生たちが自分の患者を任せたいと思っても,任せきれないということは,実際問題あると思います.医療連携は,お互いの能力も引き上げるような形にしていくと,勤務医の長時間労働の解決の一つになると思います.
 白水 日本は主治医制で,一人の医師が何もかもその患者さんの責任を持つ.それは組織としては非常にまずいわけで,もう少しグループで診て,主治医がいなくてもほかの医師が対応できるという形にしないと,一から十まで一人の医師が面倒を見るという形では,立ち行かなくなるだろうと思います.
 池田 大きい病院なら何でもできるわけではなくて,やっぱり得意,不得意があるので,例えば,「盲腸などの手術は,開業の先生のほうがお上手ですよ」という視点がなければならない.どうしても大きい病院は,何でも上手だけれども,行ったら煩わすから行くな,という形ではなかなかうまくいかないんだろうと思います.それぞれに機能分担をして,役割をきちっと果たすことが大事だと思います.
 星 日本の病院は,組織体として機能していないのだと思います.つまり,マネージメントの不足あるいは組織体としての病院の運営の不足が,先ほどからいろいろ出ている問題の根底にあるのかなと思います.
 そういう視点を医療界が持って,病院という組織体を変えていくということが,医師の能力を上げていくと同時に行われないと,いつまでたっても,前進はないのかなという印象を持ちました.

出 席 者

(司会)
池田俊彦(日医勤務医委員会委員長・福岡県医師会副会長)
内山政二(国立療養所西新潟中央病院整形外科医長)
大谷恭一(鳥取県立中央病院医療局長)
白水明代(小倉第一病院副院長)
望月 泉(岩手県立中央病院消化器外科長)
リー啓子(リーメディカルクリニック院長)
星 北斗(日医常任理事)

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