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第1020号(平成16年3月5日) |
中医協総会
診療報酬改定で諮問を即日答申

中央社会保険協議会総会(会長:星野進保総合研究開発機構客員研究員)が,二月十三日,厚生労働省で開催され,坂口力厚生労働大臣から諮問のあった平成十六年度診療報酬改定案を原案どおり即日答申した.なお,答申には,九項目からなる診療側,支払側のそれぞれの意見をまとめた項目が付記された.
昨年十二月十八日開催の中医協総会において,平成十六年度診療報酬改定での診療報酬本体の改定率をプラスマイナス0%(ゼロ改定)とすることが決定.その改定内容について精力的に議論を行ってきたところが,急性期医療に係る診断群分類別包括評価(DPC)をめぐって,一時,審議が中断するという事態が発生.その後,診療側,支払側ともに調整案に合意し,二月十三日,総会が再開され,答申を取りまとめるに至った.主な改定内容は,次のとおりである.
主な改定内容
撤廃を求めていた手術の施設基準については,「暫定的見直し」を行い,症例数および医師経験年数ともに基準に満たない施設の三○%の減算は残されたものの,両方の基準を満たす施設は五%の加算,症例数は基準に満たないが,医師経験年数の基準を満たす施設は減算を行わないこととなった.
一方,今回の改定では,慢性的な小児科医不足を補うため,小児の外来の時間外加算の評価の見直しを行うなど評価の充実が図られた.
外来医療では,初診料が病院で五点(二百五十点→二百五十五点),診療所で四点(二百七十点→二百七十四点)引き上げられた.
精神医療では,医療保護入院等診療料(入院中一回三百点)や特定抗精神病薬治療管理加算(一日につき十点)が新設され,精神保健指定医が計画的な治療管理を行った場合や,精神科の包括評価を行う病棟における非定型抗精神病薬を用いた治療の評価が加えられた.
また,ハイケアユニット入院医療管理料(一日につき三千七百点)も新設され,一般病棟よりも手厚い体制の治療室で行う重症患者への集中治療の評価が加えられた.
審議後半で診療側と支払側で意見が激しく対立した,DPCの民間医療機関への拡大については,DPCデータ提供に参加していた九十二病院のうち一定の条件を満たした医療機関による平成十八年三月までの二年間の「試行」とすることで,当日,双方の合意を得た.
青柳俊副会長は,改定案に対して,診療側として基本的に内容を了承するとしながらも,「プラスマイナスゼロの財源のなかで,人に対する評価は技術料の形で振り分けることができたが,モノの評価には至っていないので,それは今後の検討課題だ」と述べた.
また,支払側委員も,改定幅がプラスマイナスゼロで,財源や審議期間に限りがあったなか,DPCの見直し,小児医療,精神医療の改善項目等が盛り込まれているとして,支払側として改定案の内容を了承するとした.
星野会長から坂口厚生労働大臣の代わりに答申を受けた辻哲夫厚生労働省保険局長は,「診療報酬改定の基本方針に沿った意義深いものであり,四月一日の本格施行に向けて全力を尽くして努力していきたい」とあいさつした.
改定内容は二月末に告示し,四月一日より実施される予定である.
日医のコメント
総会終了後,青柳副会長は厚生労働省で記者会見を行い,次のようにコメントした.
全体的に,内容ある改定ができたと思っている.十二月に決定した診療報酬本体の改定率0%が立ちはだかり,最終段階にきて改定をするという選択と,しないという選択があった.しかし,平成十四年度の改定の問題点を是正したかったので,改定に踏み切った.
今回は,前回行ったような,技術料に踏み込んだ改定はさせないというのが日医の方針だった.平成十四年度改定は,大病院よりも中小病院,診療所に,あるいは入院より入院外にマイナス影響が大きく出たので,それを頭に置いて改定を行った.また,医療の質,医療の安全を確保するための財源をどうするかというのが大きな課題であったが,人のコストを増やすということが難しかったので,技術料評価を高めてカバーする方法をとった.
モノのコストは,医療廃棄物の処理費用など,具体的に持ち込めなかったことは今後の課題と考えている.
DPCの問題は,患者の視点に立って,その影響を十分把握して検証することが先決である.今回はあくまでも試行的に,手上げ方式で二年間に限って導入するということで受け入れたが,患者の視点に立った評価は譲れない.継続して議論していく必要がある.
初診料の見直しについては,日医の委員会で,最重点項目だったので,どうしても対応したかった.再診料に手をつけると各科のバランスが崩れる.なぜなら,再診が多いところと少ない科があり,その差が五倍くらい違うので,フラットにする技術が必要になってくる.そのために,今回は初診料に重点を置いた.
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