日医ニュース
日医ニュース目次 第1021号(平成16年3月20日)

勤務医のページ

平成14・15年度勤務医委員会答申
「勤務医と医師会活動」

 勤務医委員会は,平成14年7月26日の第1回委員会において,坪井栄孝会長より「勤務医と医師会活動」について諮問を受け,鋭意検討を行ってきたが,本年3月に委員会の見解を答申に取りまとめ,坪井会長に提出した.答申の概要について2回に分けて,報告する.

はじめに

 財政主導,経済優先の下の医療改革により国民医療は危機に瀕している.このようなときだからこそ,勤務医会員も日医が推進している国民医療向上のための活動に積極的に参画する責務がある.大きな医療変革の時代にあっては,開業医,勤務医の枠を越えて,一致団結してことにあたることが肝要である.

I,医療構造変革期における勤務医の役割

 一,医療改革の方向性についての勤務医からの考察

 まず,すべての医師は,開業医・勤務医の立場を超えて,「医の倫理」に立ち戻るべきであり,医療改革の方向性は,「医の倫理」を理念的背景になされるべきである.医師会は,高い倫理性と高度の専門性をもって,地域住民のための医療システムづくりを行う公益法人のはずであるが,往々にして開業医の利益擁護団体と誤解されがちであった.
 これらを是正するためにも,勤務医が医師会活動へ積極的に参画し,医療改革の方向性についての活発な提言を行うことが重要であり,若手医師の柔軟な発想も十分に活用すべきだろう.

 二,よりよい医療を推進するための勤務医の役割

 二十一世紀は,患者と医療者の関係を再構築する世紀である.そのためには,医師が早急に意識改革をする必要がある.
 患者中心の医療は,インフォームド・コンセント,情報開示,EBM,医療安全,IT化などと不可分である.特に,情報の開示と医療安全については,医師が先頭に立って進めるべきであり,勤務医は医療機関の中心的役割を果たすべきである.
 また,プロフェッションとしての質を適正に評価するためのキャリアパスシステムを構築することがぜひ必要であろう.

II,医師の資質向上と育成を支える勤務医の役割

 一,医の倫理の高揚と自浄作用

 高度な医療技術の開発と医学研究の進歩が,臨床の場で人の生命や生活の質に直接関わりを持つようになり,医の倫理の認識とその体系化が強く求められている.
 とりわけ専門性を追求する病院医療では,医療技術を重視する価値観と人権を重視する価値観の間で選択を迫られることが多く,その中心的な役割を担う勤務医が,医の倫理への認識を高めることが喫緊の課題である.
 専門分化が進む医療界で患者中心の医療を推進するためには,医の倫理を共有する体制作りが必要である.
 医の倫理は,医師がプロフェッションとしての価値を高める最も大切な要素である.医の倫理が診療内容や経験のいかんに関わらず病院組織として浸透することこそ,医療が患者の信頼に応える質の担保であり,勤務医に期待されるところが大きい.

 二,生涯教育の推進

 教育する側としての勤務医を,生涯教育制度発足当時から比べると,新しい医学教育方法について熱心に研修を始めたこともあり,講演内容が充実し,講演方法も格段の進歩が見られ,教育する側の勤務医の努力とその成長は,高く評価される.
 今後,勤務医は率先して生涯教育に能動的に取り組み,自己研鑽に励むなかで,勤務医以外の医師とも交流を深め,相互理解を推進することが望まれる.

 三,新医師臨床研修制度への取り組み

 平成十六年四月から新臨床研修制度が開始される.
 人間が生まれてから死ぬまでのあらゆる場面に全人的に関わるのが医師であり,医師会活動はその実践である.この全人的医療の研修の場として,一般臨床研修病院の役割が期待されている.
 厚生労働省は,新研修制度における研修病院の指定基準を,医師確保が困難な地方の事情を考慮して暫定的に緩和したが,このソフトランディングは,われわれ先輩医師の力量を試されることでもあることを銘記しなければならない.その意味で,多くの研修医を受け入れる一般研修病院の勤務医の役割は大変重要である.
 また,医学界の中枢で活躍中の多くの医師は,系統化された教育を受けてこなかったことが現実としてあり,新臨床研修制度は,先輩医師たちの再教育制度といっても過言ではないだろう.

答申全文はこちら>>

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.