 |
第1028号(平成16年7月5日) |

介護保険制度の見直し

介護保険制度は,介護保険法附則第二条において施行後五年を目途として制度の全般に関して検討を加え,必要な見直しを行うこととされている.
附則には「要介護者等に係る保健医療サービス及び福祉サービスを提供する体制の状況,保険給付に要する費用の状況,国民負担の推移,社会経済の情勢等を勘案し,並びに障害者の福祉に係る施策,医療保険制度等との整合性及び市町村が行う介護保険事業の円滑な実施に配慮し,被保険者及び保険給付を受けられる者の範囲,保険給付の内容及び水準並びに保険料及び納付金の負担の在り方を含め,この法律の施行後五年を目途として,その全般に関して検討を加え,その結果に基づき,必要な見直し等の措置が講ぜられるべきものとする」と記載されており,現在,社会保障審議会介護保険部会において討議されている.
「介護保険」は平成十二年四月に施行され,四年が経過した.この間,介護サービス利用者は,平成十二年開始時の百四十九万人から平成十五年十二月には二百九十八万人に増加した.
一方,多数の事業者が参入しサービスは質・量共に充実し,要介護認定,契約によるサービス利用など新しい社会保険制度としての仕組みに対する理解も深まり,おおむね順調に運営されていると行政サイドは評価している.
しかし,現場の感覚では,介護保険制度が目的としている高齢者に対する真の自立支援の仕組みとして機能しているかを考えて見ると,利用者の人生や生活を支援するケアマネジメント,在宅生活基盤,リハビリテーションの普及など多くの課題がある.そして,特に多くの医師から必要な医療が適切に提供できないとの苦情があり,まだまだ評価できる段階ではない.
これらの点に関しては,日医は従来から要介護認定をはじめとして基盤整備,痴呆性高齢者に対する処遇をはじめとするケアマネジメントの重要性など,さまざまな提言を行ってきたが,今後特に適切な医療提供に対する提言の重要性を痛感している.
現在,介護保険部会での議論は,被保険者および保険給付を受けられる者の範囲に移り,障害者福祉を含めた支援費制度と介護保険制度との統合が検討されている.
この統合については財源的な理由が大であるが,その理由だけでは国民の理解は得られない.むしろ医療保険と同様に,すべての国民に対する社会保障の意味合いを考慮し,不幸にも疾病や障害を抱えた国民が,その意思に基づいて必要な医療や福祉サービスを選択活用し,住み慣れた地域において生活を営むことができる制度として確立することを念頭に,十分に検討する必要がある.
|