日医ニュース
日医ニュース目次 第1030号(平成16年8月5日)

視点

今冬のインフルエンザワクチン
―需要予測とお願い―

 インフルエンザ流行の季節が近づくと,毎年のように各地でワクチン不足の声が起こり,世間を騒がせる.
 昨年は特に激しく,まさに国中パニック状態で終始した.しかし,都道府県や,卸売業者,医療機関等の必死の融通努力もあって,製造量千四百八十一万本中十八万本(約一・二%)を残す結果で終わった.
 平成十四年度は,千三百万本の製造量に対して二百六十万本(約二〇%)残したが,それでも各地で,ワクチン不足の声が聞かれた.
 インフルエンザワクチンの実際の需要は,マスコミ報道,流行状況等のさまざまな要因によって大きく変動する可能性はあるが,十五年度は,特に,予期せぬSARSや鳥インフルエンザ騒動が大きく影響したことは事実であった.
 また,製造量の決定に大きなネックになるものとして,ワクチンの市内流通上のロスの問題もあり,いずれにせよ,毎年頭の痛い思いである.
 次シーズンのインフルエンザワクチンの製造量の決定は,厚労省の「インフルエンザ需要検討会」で,日医も参加し,協議決定される.
 例年同様,昨シーズンの経験をもとに実施される「医療機関等調査」と「世帯調査」を参考に,今年度の予測値が算定される.今年度の医療機関等調査では,最大値千八百九十八万本,最小値千八百十七万本,世帯調査では,最大値千八百十一万本,最小値千七百五万本と予測され,両調査の結果から本年度のワクチン需要量は千七百五万本から千八百九十八万本程度と推定された.特に,昨年の需要量に大きく影響したと思われるSARSと鳥インフルエンザの影響を今回の世帯調査を参考に考慮すると,SARSの国内患者発生時は千八百八十七万本から千九百九十八万本,鳥インフルエンザの国内患者発生時は千八百十五万本から千九百二十一万本が必要と予測されている.
 一方,今年度のメーカー四社の最大製造予定量は千九百九十六・五万本とされているが,少なくとも二千万本(昨年使用量の三七%増)を超える十分な量を確保してくれるよう,強く要望している.
 さらに,検討会においては,ワクチンの安定供給に対する対応として,都道府県には,「対策委員会」を設置し,調整を指示するとともに,メーカーや卸売業者には,前年使用実績の三割増以内の納入厳守,百万本の融通対策のための保管(国が出荷調整)を指示している.
 医療機関においても,それらの調整に全面的に協力するとともに,返品(特に十本以上)は原則なし,大量需要医療機関(特に百本以上)では分割納入等への協力を要請する次第である.また,医療機関においては,特に,接種者の安全を考慮し,ワクチンの貯法(遮光,十度C以下に凍結を避けて保存)を遵守するとともに,一人一本使用を原則として,医療機関間での融通もできるだけ避けるようお願いしたい.
 特に,六十五歳以上の高齢者等の法的接種以外には,発生した健康被害への国の補償はないことを十分承知のうえ,慎重な診察により適応を決め,適切な接種料金での実施をお願いする次第である.

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