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第1040号(平成17年1月5日) |
平成16年度家族計画・母体保護法指導者講習会
母体保護法関連の諸問題をめぐって

日医・厚生労働省共催の家族計画・母体保護法指導者講習会が,昨年十二月四日,日医会館大講堂で開催された.
伯井俊明常任理事の司会で開会し,植松治雄会長が,「日医では,国民と共に国民の目線に立った活動が必要と考え,国民医療推進協議会を立ち上げた.『国民皆保険制度を守る国民運動』については,約六百万人の署名を得て,衆・参両院に請願した.今後も引き続き努力を続けるつもりである.また,産婦人科医療においては,安心して出産できるよう体制の充実が必要である」とあいさつした.
尾辻秀久厚生労働大臣(苗村光廣厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課長代読)のあいさつの後,来賓あいさつした坂元正一日本産婦人科医会長は,産婦人科医の減少問題に触れ,産婦人科医療の将来が安定するよう努力していきたいと述べた.
植松会長の特別講演「今,医療に求められるもの」では,小泉内閣が,医療にも聖域をなくして改革し,市場経済原理を取り入れようとしていることには危機感を持つとし,「日本の医療は,全国一律の保険点数で競争原理が働いていないといわれるが国民にとっては,安心して受けられる医療といえる」と述べた.また,アメリカの医療と比較しながら,日本の国民皆保険制度の重要性を指摘.混合診療解禁と株式会社の医療への参入については,医療費の国民負担額を例に挙げて改めて反対を表明した.また,医師の倫理問題,生涯教育,医師免許更新制度についても言及した.
その後のシンポジウム「母体保護法をめぐって」では,(一)行政の立場から,苗村課長より,母子保健の現状と取組についての説明や,妊娠四カ月未満の中絶胎児の取り扱いに関する調査結果等の講演があった.
つづいて,(二)「母体保護法指定医師の指定基準」モデルについて(秦喜八郎宮崎県医師会長),(三)母体保護法の適正な運用(栃木明人日本産婦人科医会常務理事),(四)着床前診断「医学的診断の方法と可能性について」(吉村 典慶大医学部産婦人科学教室教授)の講演が行われ,母体保護法及び指定医師の指定基準モデルの解説,胚生検による着床前遺伝子診断などについて,詳細な説明がなされた.
最後に,母体保護法をめぐる諸問題についての活発な質疑応答があり,閉会した.
参加者は,百七十七名.
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