日医ニュース
日医ニュース目次 第1046号(平成17年4月5日)

第112回日本医師会定例代議員会
植松会長あいさつ(要旨)

所信表明を述べる植松治雄会長

 第百十二回日本医師会定例代議員会に,早朝よりご出席いただきまして,誠にありがとうございます.
 昨年は,福井県をはじめ各地での台風や洪水,新潟県中越地震,そして,三月二十日の福岡県西方沖地震など,多くの自然災害が発生しました.被害を受けられた各県ならびに各県医師会にお見舞いを申し上げるとともに,一日も早い復興を祈念いたします.また,昨年末のスマトラ沖地震・インド洋津波災害救済のために,会員の皆さまから一億一千七百万円余の義援金をお寄せいただき,三月二十五日に日本放送協会を通じて,日本赤十字社にお渡しすることができましたことを,厚く御礼申し上げます.

国民とともに医療政策に寄与

 経済財政諮問会議,規制改革・民間開放推進会議,財務省などが主張する市場経済原理に基づく改革が推し進められていることについて,会員の皆さまと同じように大きな危惧を抱くと同時に,その対応の重要性を認識しています.私どもの基本姿勢は,常々申し上げているとおり,社会保障理念の確保と国民皆保険制度の堅持です.
 平成十六年末までに混合診療の全面解禁を,との昨年十月十二日の小泉首相の所信表明演説に対して,私どもは,国民皆保険制度の崩壊,国民間の階層化につながるものとして,これを断固阻止すべく決起しました.三師会,四師会が主体となった反対運動では,医療関係者のみの意見であると処理されてしまうので,国民とともに皆保険制度を守っていく活動を行うこととしました.
 そこで,国民医療推進協議会を設立し,三十七団体に参加をいただき,国民皆保険制度堅持,混合診療解禁反対の国民運動を展開しました.各都道府県医師会,地域医師会に対しても,同様の行動と反対署名活動をお願いしました.その結果,六百六十万を超える署名とともに十一月三十日に衆・参両院議長に請願し,与党議員の約八割に及ぶ賛同を得て,十二月三日の採択に至ったのです.首相の施政方針に対する反対運動が請願採択されたのは,憲政史上初といわれています.国民とともにこの結果を出せたことに甚大な喜びを覚えると同時に,皆さまに深く感謝の意を表します.この間に,名称は違えど,国民医療推進協議会を各地で立ち上げていただきました.私どもは,医師会と各種団体あるいは市民との連携を,今後さらに広げ,健康や医療に関する各種の問題を提言し,日本の医療政策に寄与していく所存です.
 この活動により,尾辻秀久厚生労働大臣と村上誠一郎内閣府特命担当大臣との間で,特定療養費制度の見直し,保険導入検討医療(仮称),患者選択同意医療(仮称),国内未承認薬の対応等について合意がなされました.しかし,具体的な内容は今後の課題です.その中身こそが重要であり,私どもは今まで以上に活発な運動と働き掛けを行ってまいります.
 中央社会保険医療協議会(中医協)の見直しについては,構成メンバー等を検討する「中医協の在り方に関する有識者会議」が,当初は内閣府に設置するといわれていましたが,私どもの主張どおり厚生労働省に置くことが決定され,一定の成果を得られたことは喜ばしく思います.

医療費原資の拡大を求める

 規制改革・民間開放推進会議が取りまとめる「規制改革・民間開放の推進に関する第一次答申(追加答申)」案に,医師免許更新制度の導入の検討が言及されているとの情報を得て,私どもは即座に政治的活動を展開し,翌日にはこれを抹消することができました.同会議と経済財政諮問会議の議論内容をつぶさに検討したところ,一度否決されたことでも執拗に何度も主張してくる傾向があるので,今後とも注視を怠らず,時機を失しない対応を心がけてまいります.
 今国会に提出された介護保険法の改正案,来年四月の診療報酬と介護報酬の同時改定など,この一年は非常に重要です.医療費の伸びの抑制,公的保険の守備範囲の見直しなど,政財界では医療費を引き上げる状況にあらずと論じられていますが,今求められている医療の安全,質の向上,特定療養費制度の拡大などに鑑みると,医療費抑制はあり得ない状況です.
 この主張を認知していただくには,医師会の努力を世に知らさねばなりません.生涯教育の推進,自浄作用の具現化により,医師免許更新論に対応できることや,将来の医療費増大を抑えるため,国民の健康を守る予防活動などの姿を示すことが重要です.禁煙運動は従来から進めていますが,日本糖尿病学会・日本糖尿病協会とともに糖尿病対策推進会議を新たに設立しました.このような行動を示しながら,「医療を経済に合わせるのではなく,経済を医療に合わせるべきである」との考えの下,医療費原資の拡大を求める所存です.

国民の望む医療提供体制を構築

 現在,第五次医療法改正に向けての議論が進められていますが,私どもは,真に国民の望む,安全で良質な医療提供体制の整備に努めます.
 四月一日の個人情報保護法施行に伴い,各医師会・会員に情報を提供していますが,誤りなき対応をお願いすると同時に,医師の行為は今までも個人情報保護に重点を置くものでしたので,「過度な心配はご無用」と個人的には考えています.
 新医師臨床研修の必修化に伴って医師不足が声高に叫ばれていますが,絶対数の不足か,それとも地域的・科目的偏在が原因しているのか,正確に現状を把握する必要があるので,日医として調査を開始しました.
 また,昨年は女性会員懇談会を発足させ,活発な議論をしていただいています.七月には,男女共同参画フォーラムを同懇談会が企画開催し,各方面からのご意見を伺いながら,新しい展望を模索します.このフォーラムは,医師不足問題の解消にも何らかの貢献があると期待しています.
 以上,現在までの日医の活動状況と今後の方針を述べさせていただきました.どうもありがとうございました.

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