日医ニュース
日医ニュース目次 第1054号(平成17年8月5日)

視点

日本脳炎ワクチン事情―積極的勧奨の一時中断―

 厚生労働省は五月三十日,日本脳炎ワクチン接種の「積極的勧奨の差し控え」を各市町村に勧告した.また,同日省内で緊急会見を行い,その理由として,接種によるADEM(急性散在性脳脊髄炎)の発症を契機に判断したと報告した.
 そもそも,その契機となったのは,五月二十五日に開催された厚労省の「予防接種疾病・障害認定審査会」において,平成三年以降五例目になる日本脳炎ワクチン接種後の重症ADEMの発症者(山梨例)を,直接現行ワクチンとの医学的因果関係は厳密には証明されないが,接種自体との因果関係は否定できないと判断したことによる.翌二十六日,厚労相による正式な健康被害認定が決定した.
 五月二十六日夕刻,早速厚労省と日医が協議を開始した.
 日医としては,現在国内における日本脳炎の発症は,総数でも数例に激減し,その大部分は五十歳代以上の中高齢者で,小児の発症は極めてまれで,特に,十歳代後半の発症者は過去二十二年間に一例に過ぎないこと,したがって新しいワクチンが供給できるまでの間,接種を中断してもその該当者のなかから患者が発生することはまず考えられず,むしろ接種後のADEMの発症を考えれば,勧奨の中断は,新しいワクチンが使用できる来春まで,やむを得ない措置と判断した次第である.
 そこで,五月三十日,厚労省と日医が公表を申し合わせていたところ,公表前に一部の新聞に掲載され,現場で混乱が起きたことは誠に遺憾であり,お詫びするとともに報道関係者の自粛を要望するものである.
 現在の日本脳炎ワクチンはマウスの脳を使って製造されているもので,理論的なリスクが危惧されるとすれば,その脳組織の残存が疑われる.それを避けるためにも,すでに来春よりサルの腎臓組織を使っての新ワクチンの採用が決定されている.
 しかし,現在の日本脳炎ワクチン自身は安全で,ワクチン自身によるADEMの発症が厳密に証明されている訳でもないので,使用を禁止するまでのものではない.
 また,この間に,日本脳炎の流行地域へ渡航する者や,蚊に刺されやすい環境にある者など,本人または保護者が特に接種を希望する場合には,今回の措置と日本脳炎ワクチンの効果および副作用を十分に説明のうえ現行の日本脳炎ワクチンの接種を実施してもよいし,法的接種としての条件は従来と変わりはない.

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