日医ニュース
日医ニュース目次 第1064号(平成18年1月5日)

診療報酬本体1.36%引き下げ
植松会長
決定に不満を表明

診療報酬本体1.36%引き下げ/植松会長/決定に不満を表明(写真)

 政府は,昨年12月18日,診療報酬の3.16%(内訳:診療報酬本体1.36%,薬価1.8%)の引き下げを決定した.これに対して,植松治雄会長は,同日,櫻井秀也・宮崎秀樹・寺岡暉各副会長,田島知行・松原謙二・伯井俊明各常任理事とともに厚生労働省で記者会見を行い,今回の結果への不満を次のように表明した.(写真左から:櫻井,植松,宮崎,寺岡の各役員)

 今回の診療報酬の改定については,早い段階から経済財政諮問会議,財政制度等審議会などから引き下げの要望がなされ,この流れに乗る形で財務省からは診療報酬本体の五%以上の引き下げが求められていた.
 これに対して,日医は,過去四年間,診療報酬の引き下げの影響を受けて厳しい経営状況を強いられている医療機関の窮状を訴えるとともに,医療の安全ならびに質の確保,小児医療・産科医療等への対応のために少なくとも三%以上の診療報酬の引き上げが必要なことを主張してきたところである.
 しかし,本日,われわれの要求も聞き入れられることなく診療報酬の引き下げが決定され,われわれとしてはまったく不満であるというほかない.四年前に比べて,わが国の経済状況は上向いており,次回の春闘では,民間企業の従業員の賃金引き上げが認められるといわれている.このような状況のなかで,なぜ,診療報酬だけが引き下げられなければならないのか,まったく理解に苦しむ話である.
 この結果では,医療機関は経営を維持するために経費を節減せざるを得ず,このことによる医療の質の低下が今から懸念される.
 また,今回の決定が小泉純一郎首相の強い意向により,突然に決められてしまったことについては,憤りを感じている.政府・与党医療改革協議会が,十二月一日に決定した「医療制度改革大綱」のなかには,「診療報酬は引き下げの方向で検討する」との記述があった.本来であれば,厚労省の社会保障審議会,あるいは自民党の社会保障制度調査会等で,医療の内容を踏まえた形で,診療報酬の決定に係る議論が行われるべきはずであったが,そのようなこともなく,財政を抑制するという目的だけのために,不透明な形で引き下げが決定されてしまった.
 このように,官邸主導で政策が決められてしまうということが,先の衆議院選挙以降ますます強くなっているが,われわれもその流れのなかに巻き込まれてしまったような気がする.この流れはどうしても食い止めなければならないが,そのための手段は,“国民の声”にあると考えている.
 いずれにしても,今回改定率が決定したことにより,今後は中医協で,その財源の配分の議論が開始される.われわれとしては,ここでの議論が重要になると考えており,日医推薦の委員を通じて,日医の考えを明らかにしていく.また,その際には,マイナス改定ということで財源もないことから,現在の診療報酬のなかで不合理なものを是正することを第一義に考え,議論に臨んでいきたい.
 さらに,小児科,産科,小児救急に診療報酬を重点配分するということについては,他の科との関係もあり,診療報酬だけで対応するのは難しいのではないだろうか.したがって,政府には補助金のような別の形での対応を求めていくことも考えている.
 「医療制度改革大綱」の内容を見ても分かるとおり,そこに書かれている政策は患者負担を求めるものばかりで,いかに医療の給付を抑え,財政再建を図っていくかに終始している.このような考えで医療制度改革が進められてしまえば,国民皆保険制度が崩壊してしまうということで,日医では国民集会を開催すると同時に,「国民皆保険制度を守る署名運動」を実施してきたが,みなさんの協力のおかげで,現在,千七百万人を超える署名を集めることができた.
 この数字は,日本の全人口の一四%に当たる大変大きな数字であり,われわれは重く受け止めている.一月二十日に開会される通常国会には,医療制度改革の関連法案が提出される予定となっているが,われわれは,この“国民の声”を背景に,今後も引き続き国民皆保険制度の堅持,あるべき医療制度の構築に向けた活動を展開していきたい.

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