日医ニュース
日医ニュース目次 第1067号(平成18年2月20日)

介護療養型医療施設の廃止への反論

介護療養型医療施設の廃止への反論(写真) 厚生労働省の医療構造改革推進本部は,昨年十二月に決定した「療養病床の将来像について(案)」のなかに,「療養病床の体系的再編に沿って,介護報酬上の評価について廃止することを検討する」との文言を唐突に盛り込んだ.今年に入り,医療法施行規則を改正し,療養病床の人員配置標準を引き上げるとともに,経過措置として,新たに医師・看護職員等の配置を現行より引き下げた類型を創設する見直し案が示され,二月七日の自民党総務会で,介護療養型医療施設の廃止を含む法案を今国会に提出することが了承された.
 現在,療養病床は,医療保険適用の病床が二十五万床,介護保険適用の病床が十三万床に分類されているが,この法案では,介護療養型医療施設を平成二十三年度末に廃止し,全体の療養病床数を十五万床に削減されることになる.
 これに対して,日医と四病院団体協議会(四病協)は,七日に厚労省内で合同記者会見を行い,介護療養型医療施設の廃止への反論を行った.今回の合同記者会見は,日医と四病協が行っている定期的な協議のなかから実現したものであり,日医からは,寺岡暉副会長,田島知行・青木重孝両常任理事,四病協からは,佐々英達全日本病院協会長,西澤寛俊同副会長,近藤脩日本医療法人協会副会長,長瀬輝諠日本精神科病院協会常務理事,加藤正弘日本病院会代議員会議長が出席した.
 冒頭,寺岡副会長は,「療養病床のあり方,今後の高齢者医療における医療保険・介護保険のかかわり方についての議論なくして,廃止ありきという方向性が決定したことは誠に不適切である」と述べ,廃止の流れが突然出てきたことに強い不快感を示した.また,「療養病床は,あくまで『医療法』に規定する病床であり,社会保障審議会医療部会等での十分な検討が必要」と指摘.「高齢者が増加していく将来の医療提供体制の構築は,『療養病床数の削減』『平均在院日数の短縮』を目的とする,財政のみの観点から議論されるべきものではなく,包括的な国民的議論を要する課題である」と強調した.
 さらに,寺岡副会長・青木常任理事は,第四次医療法改正により,「その他の病床」を一般病床と療養病床に区分する政策が進められてきた過去の経緯に触れ,その政策により介護療養病床に追い込んだ患者さんたちに対して,「今度は療養病床をなくします」というのはあまりにも無責任過ぎると憤りを見せた.
 一方,西澤全日本病院協会副会長は,「廃止の議論をいったん白紙に戻したうえで,介護保険,医療保険,医療法を包含する検討を十分に行うべきである」と主張するとともに,平均在院日数,参酌標準等における厚労省の考え方について問題点を指摘した.また,拙速な廃止により,国民に十分な慢性期医療が提供できなくなることへの危惧を示した.
 なお,今国会に提出が予定されている「老人保健法」改正案,「介護保険法」関連法案改正案を含む医療関連法案について,事前に十分な検討がされていないのは不適切であることから,日医は,二日,中川秀直自民党政務調査会長に要望書を提出した.

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