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第1070号(平成18年4月5日) |
資料版
DPC緊急意識調査結果報告書(概要)(日本医師会)

I.調査概要
平成18年度診療報酬改定におけるDPC(診断群分類別包括評価)対象病院の拡大方針に対し,今後DPC導入の対象となり得る施設(病院)の意見を集約するため,本調査を行った.
調査対象は,日医会員のうち,全国の病院開設者または法人代表者(全国5,114人)で,回収数(率)は2,135人(41.7%),有効回答数(率)は2,018人(39.5%)であった.
調査期間は,平成18年1月24日〜31日.
II.分析結果
1. 現行のDPC制度全般についての認知度(n=2,018)
現行のDPC制度全般については,「おおむね知っている」が50.8%(1,025人)と最も多く,次いで,「あまり知らない」28.9%(583人),「ほとんど知らない」9.9%(199人)の順であった.
2. DPCの基本方針および考え方の妥当性について(n=2,018)
(1)DPCの基本方針および考え方に対する評価
「やや不適」が44.5%(898人)と最も多く,次いで「おおむね妥当」26.6%(537人),「不適」が24.1%(486人)の順であった.
否定的な評価である「やや不適」および「不適」の合計は,約7割であった.
(1)-1「やや不適」「不適」と考える理由(n=1,384,複数回答)
「診療報酬のあり方(ものと技術の分離)として問題」が最も多く,次いで「コスト削減による患者さんへの皺寄せが大きい」「DPC拡大を進めていくのは時期早尚」の順であった.
(2)DPC対象病院拡大の方向性に対する評価(n=2,018)
「やや不適」40.4%(816人)が最も多く,次いで「不適」27.1%(547人),「おおむね妥当」27.0%(545人)の順であった.
否定的な評価である「やや不適」「不適」の合計は,約7割であった.
(3)望ましいと考える急性期入院医療の支払方法(n=2,018)
「原則出来高払いによるべき」が74.2%(1,497人)で,次いで「現行のDPC包括評価の体系でよい」が16.1%(324人)であった.
3. DPC導入について(n=2,018)
(1)自院のDPC導入に関する意向
「検討する考えはない」が51.4%(1,038人)と最も多く,次いで「検討はしてみたい」29.4%(593人),「分からない」12.5%(253人),「ぜひ導入したい」5.5%(111人)の順であった.
(1)-1「検討する考えはない」と回答した理由(n=1,038,複数回答)
「急性期の対応はしていないため」が43.5%(452人)と最も多く,次いで「DPC導入に伴う,院内の教育研修体制が取れない」40.6%(421人),「レセプトIT化やコーディングの対応などは無理である」40.1%(416人)の順であった.
(2)自院のDPC導入に関する意向(n=1,566)
前記(n=2,018)から上記回答者(n=452)を除いた導入の意向をみると,「検討はしてみたい」37.8%(592人)と最も多く,次いで「検討する考えはない」37.5%(587人),「分からない」16.2%(253人),「ぜひ導入したい」が7.1%(111人)の順であった.
(2)-1「検討する考えはない」と回答した理由(n=587,複数回答)
「コスト重視により,値段の高い薬剤や材料等が使用できなくなる可能性がある」が48.2%(283人)と最も多く,次いで「レセプトIT化やコーディングの対応などは無理である」48.0%(282人)の順であった.
III.まとめ
DPC制度そのものの認知が進み,有効回答総数(n=2,018)の6割以上が制度を知っていると回答している一方で,DPC制度そのものに対する回答者の評価は,総じて厳しい結果であった.まず,基本方針および考え方については68.6%,DPC対象病院拡大の方向性については67.5%,おのおの7割が否定的な評価であった.
また,望ましい急性期入院医療の支払い方式として,有効回答総数の7割以上が「可能な限り,原則出来高払いによるべき」と回答していた.
自院への導入については,将来対象となり得る対象(n=1,566)のうち,「ぜひ導入したい」は僅か7.1%に過ぎず,「検討はしてみたい」は37.8%,「検討する考えはない」は37.5%と,導入に対する慎重な姿勢がうかがえた.
さらに,「検討する考えはない」理由(n=587)として最も多いのは,「コスト重視により,値段の高い薬剤や材料等が使用できなくなる(48.2%)」であり,患者に対する医療の質への懸念が示唆されていた.
DPC制度の運用には,医療現場の納得の得られるような患者に対する医療の質の向上のエビデンス,急性期医療の実態に即した明確な算定ルールが求められている.
なお,この報告書の全文は日医ホームページのメンバーズルーム(要・会員専用アカウント)に掲載されている.また,内容に関する問い合わせは日医総研(TEL:03-3946-2121(代))まで.
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