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第1076号(平成18年7月5日) |
唐澤会長らが,厚労大臣などに申し入れ
「国民に痛手が及ばぬように」

自民党の歳出改革に関するプロジェクトチームが,今後五年間で,医療・介護などの社会保障分野における歳出を一・一兆円削減するとした問題で,唐澤 人会長,竹嶋康弘・宝住与一両副会長は,六月十九日,川崎二郎厚生労働大臣(写真右),与謝野馨金融・経済財政担当大臣(写真右下)らを訪ね,以下の内容について申し入れを行った.
一,過大な医療費推計による医療政策の転換を
厚労省は,これまで医療費の将来予測を,過大に見積もっては下方修正する「過ち」を繰り返している.しかも国は,過大な推計値を前提に医療費の抑制策を次々と打ち出そうとしている.
厚労省は医療制度改革実施後の二〇二五年度の医療給付費を四十八兆円と推計している.しかし,一人当たり医療費の伸びをもとに日医が再推計した二〇二五年度の医療給付費は四十二兆円となっている.この推計値には,二〇〇六年度の診療報酬改定の影響を織り込んでいないため,さらなる抑制もあると予測される.
医療費抑制の必要性を示すため,いたずらに不安を煽っているようにさえみえる厚労省は,最新データをもとに推計をし直すべきである.
二,医療制度改革関連法,診療報酬改定の影響
今回の診療報酬改定および医療制度改革関連法案は,いずれも患者動向や医療機関経営への影響が懸念される内容であった.その影響結果も見極めないうちに,再び制度改革を行うことは非常に問題がある.また,改革には十分な準備と,医療機関や国民への周知が不可欠で,短期間での頻繁な改革は現場に混乱を引き起こすだけである.
今回の診療報酬改定の影響を,厚労省予測ではマイナス一〜二%,日医予測ではマイナス三%と見込んだ.しかし,日医で現在実施中の緊急レセプト調査の速報によると,四月の診療所の総点数(医療費)は対前年比でマイナス五・九三%の大幅減になることが分かった.
さらに,七月からの療養病床の診療報酬引き下げや,看護師の配置基準見直しで,今後,病院にも大きな影響が出ると予想される.医療機関は,良質な医療を提供するうえで不可欠な,医療安全のためのコストや再生産費用を確保することすら困難になる.
三,医療機関を追いつめ,最終的には国民が痛手を受ける改革の変更を
高齢者の自己負担引き上げ,介護療養病床の廃止,診療報酬の大幅引き下げなどによって,医療機関は追いつめられ,最終的には国民が大きな痛手を受けることになる.全国の医療機関は医療の質と安全性を確保するための限界まで追い込まれている.「骨太の方針二〇〇六」に盛り込まれようとしている四項目─(1)保険免責制(2)いわゆる「混合診療」の適用拡大(3)後期高齢者の患者負担引き上げ(一割→二割)(4)薬剤給付範囲の見直し─は,絶対容認することはできない.
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