日医ニュース
日医ニュース目次 第1091号(平成19年2月20日)

中医協(1月31日)
中医協が柳澤厚労相へ7対1入院基本料に関する建議書を提出し,強い意見表明を示す

中医協(1月31日)/中医協が柳澤厚労相へ7対1入院基本料に関する建議書を提出し,強い意見表明を示す(写真) 中医協診療報酬基本問題小委員会ならびに総会が,一月三十一日,厚生労働省で開催された.
 当日は,基本問題小委員会で,「七対一入院基本料」に関する建議書案について審議し了承.総会で承認された後,土田武史中医協会長(早稲田大学商学部教授)から,柳澤伯夫厚生労働大臣に提出した.中医協の建議書提出は,平成七年に薬価決定ルール見直しを求めて以来十二年ぶりのこと.
 七対一入院基本料は,平成十八年四月の診療報酬改定で“急性期入院医療の評価”として新設され,予想を上回る届出がなされた.特に大学病院が,例年を大きく上回る看護師の積極的募集活動を行ったことから,地方・中小病院が,深刻な看護師不足に悩まされるなど地域医療に混乱をもたらしている.
 また,急性期入院医療の評価を目的としながら,必ずしも急性期医療を担っているとは言い切れない病院に,看護職員という限られた貴重な医療資源が用いられているとの指摘もなされていた.
 日医としては,平成十八年度改定における「急性期入院医療の評価」という方向性はよかったが,予測に反して,現場は思わぬ方向に向かい混乱している現状を鑑み,地域医療の現場に,これ以上の混乱が起こらないように「地域格差是正」「激変緩和」を強く主張してきた.
 建議書(全文別掲)では,平成十八年度診療報酬改定で導入された「七対一入院基本料」導入後の看護職員の不足による地域医療への深刻な影響等に“深い憂慮”を示したうえで,「七対一入院基本料」の取り扱いについて,(1)急性期等手厚い看護が必要な入院患者が多い病院に限って届出が可能になるような基準の見直し(2)看護必要度等の入院患者の判定方法等の策定(3)看護職員確保に関する施策への積極的取り組み―を求めている.
 中医協として強い意見表明を行うことで,現場の混乱を防ぐ歯止めとすることと,次回改定に向けて,算定すべき病院の性格付けや要件を検討していく方針を明確に示した.

平成19年1月31日

厚生労働大臣 柳澤 伯夫 殿

中央社会保険医療協議会
会長 土田 武史

建 議 書

 当協議会においては,昨年4月の平成18年度診療報酬改定実施以後,看護の問題に関して,経過措置の在り方などを慎重に検討してきた.特に同改定において導入した「7対1入院基本料」については,急性期入院医療の実態に即した看護配置を適切に評価する目的で導入したものであるが,制度導入後,短期間に数多くの届出が行われるとともに,一部の大病院が平成19年度新卒者を大量に採用しようとしたことにより,地域医療に深刻な影響を与える懸念が示されてきた.このような状況を踏まえ,当協議会においては,昨年11月29日の第95回総会以降,この問題について取り上げ,実情の把握に努めるとともに,対応について審議を重ねてきたところである.
 その結果,今春に向け国立大学病院等を中心として積極的な採用活動が行われていることが明らかとなった.しかし,一方で,今回の診療報酬改定の趣旨に必ずしも合致しているか疑問なしとしない病院においても7対1入院基本料の届出が行われているとの指摘がなされているところである.看護職員という貴重な医療資源が限られていることを考慮すると,このような状況に対して,当協議会としては深い憂慮を示さざるを得ない.
 これを踏まえ,7対1入院基本料の取扱いについて今般結論を得るに至ったので,社会保険医療協議会法(昭和25年法律第47号)第2条第1項の規定に基づき,下記のとおり建議する.
 なお,各保険医療機関におかれては,看護職員の募集・採用に当たって,地域医療の実情に配意し,節度を持って行われるよう,強く期待したい.

  1. 看護職員の配置数等を満たした病院について届出を認めるという現行の7対1入院基本料の基準を見直し,急性期等手厚い看護が必要な入院患者が多い病院等に限って届出が可能となるようなものとすること.
  2. 手厚い看護を必要とする患者の判定方法等に関する基準の在り方について,必要な研究に早急に着手し,その結果を踏まえて,平成20年度の診療報酬改定において対応すること.
  3. 看護職員確保に関する各般の施策について,積極的に取り組むこと.

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