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第1096号(平成19年5月5日) |

4月11日
いわゆる300日ルールについての日医の考え方

今村定臣常任理事は,民法第七七二条に規定されている,いわゆる三百日ルールについて,自民党本部で開かれた政務調査会法務部会・民法第七七二条見直しプロジェクトチーム合同会議において説明した日医の見解を示した.
民法第七七二条には,離婚後三百日以内に生まれた子は,「前夫の子」として推定される旨が規定されている.この規定により,例えば,妻が離婚後に他の男性との間に子をもうけたが,早産などにより三百日以内に出生した場合などには,前夫の子と推定されてしまい,これを覆すには裁判上の手続きが必要になることや,子の戸籍が確定されない無戸籍の問題など,種々の問題が顕在化している.このため,現在,法務省や与党プロジェクトチームにおいても,具体的な対策が議論されている.
同常任理事は,まず,この問題に対する基本認識として,「生物的な親子関係が認められなくても,事実上の安定・継続した養育・監護関係を法律上尊重することは,子の福祉にかなうものであり,子の福祉や身分関係を安定させるために,合理性が認められる」との考えを示した.
そのうえで,同常任理事は,「母が婚姻の解消又は取り消し後に懐胎した場合にかかる出生届の特例」として,離婚後に懐胎したことを医師が証明すれば,前夫の子とは推定しない取り扱いとすることが議論されていることについて,「民法第七七二条の趣旨に反するものではないと考える.医学的に懐胎時期を推定することは可能であり,民法第七七二条二項のために不当な手続的負担を負わされるケースがあることを考えれば,早期にその運用を改めるべきである」と述べ,その方向性を支持した.
一方,同じく離婚後三百日以内の出生であっても,「母の再婚後に出生した子にかかる出生届の特例」として,再婚後の夫を父とする出生届の条件に,DNA鑑定の導入が議論されていることに関しては,「民法七七二条の趣旨に反すると考える.DNA鑑定で親子関係を定める考えが浸透すれば,鑑定結果によって,かえって親子関係についての紛争を惹起することになりかねない.また,個人のDNA情報が明らかになることで,プライバシーが侵害されかねないなどの問題があり,医師としての立場から憂慮する」と述べた.
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