日医ニュース
日医ニュース目次 第1101号(平成19年7月20日)

特定健診・特定保健指導(4)
第三者評価機構

 先般,大手介護保険事業者のコムスンが,会社ぐるみの不正請求で処分を受け,大きな社会問題となった.そもそも介護という,高齢者(社会的・肉体的・精神的弱者)に対して,密室で一対一でサービスを提供する事業に,営利を目的とする民間事業者の参入を認めた当初の制度設計には,大きな問題があったと考えている.
 今回の特定健診・特定保健指導においても,基盤整備の遅れから,また従来から,健診事業には民間事業者が参画しているということもあり,その参入が認められているが,質の担保という点では大きな課題があると考えている.ただ,介護保険と異なるのは,特定健診・特定保健指導を受ける対象が,高齢者ではなく,またその場所や環境も密室ではないという点である.
 しかし,サービスを受ける本人には,その内容を検証できるだけの知識や経験が不足しているという問題は存在する.したがって,実施主体である保険者が費用の節減のみに目を向け,サービスの内容と質をおろそかにした場合には,当初,特定健診・特定保健指導が目指した制度設計とは,まったく異質のものとなる危険性がある.
 保険者に対する評価,指導,処分のシステムが不可欠と考えるゆえんであり,昨年四月に,この制度の厚生労働省の検討会に参加した当初より,一貫して主張している.保険者機能が飛躍的に強化され,契約やその解除において主導権を握ることが想定されるなかでは,保険者性善説による今回の制度構築は将来に禍根を残すものである.
 第三者評価の実際のシステムとしては,都道府県,二次医療圏ごとに設置が進められている地域・職域連携推進協議会のなかに,専門部会といった形で設置することが考えられる.
 地域・職域連携推進協議会は,今回の特定健診・特定保健指導にかかわるすべての組織が参加し,行政が事務局となる組織であり,医師会はそのなかで中心的な役割を果たすことが期待される.
 現在,その設置が進められているものの,あまり機能していないところが多いと聞いている.ぜひ,積極的に取り組んでいただきたい.そのなかで,医師会,保険者,サービス提供者,行政,学識経験者などがメンバーとなり,特定健診・特定保健指導に関する問題点や不服申し立てについて検討し,必要に応じて調査に当たる.指導や処分が必要な場合には,行政のしかるべき担当部局(厚生労働省保険局)に報告し,対処してもらうことが考えられる.
 保険者の一部には,特定健診・特定保健指導を放棄し,後期高齢者支援金が増額されても,費用負担はそのほうが安くなるといった判断もあると聞く.
 特定健診・特定保健指導の制度が当初の目的を達し,国民にとってより良いものとなることが,何よりも重要である.

(常任理事・内田健夫)

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