日医ニュース
日医ニュース目次 第1101号(平成19年7月20日)

勤務医のひろば

自衛隊医官の現状

 国立・大学病院が独立行政法人化されるなか,自衛隊病院は数少ない国の病院となる.勤務する五百数十名の陸上自衛隊医官(定員約七百八十名)は,医務室や病院,学校や衛生科部隊に補職され,診療・健康管理・身体検査判定や災害派遣・国際貢献活動など,多様な任務に従事している.
 縮減される防衛予算のなかの医療費の制限,および国際平和協力活動などの医官派遣や医官退職増加による欠員状況下での医療安全要求により,厳しい対応が求められている.各種教育のための入校や,キャリアアップのための全国異動もある.二十四時間勤務の特別職国家公務員ゆえに,診療科による差別化や当直手当がなく,兼業兼職も原則的にできない.
 学会認定施設の維持には指導医の存在が必要だが,専門医・指導医の取得は自己研鑽に委ねられ,所要とのバランスのなかで計画的育成に難しさを感じる.さらに,施設の手術件数での差別化は,職域病院には厳しいものである.平時と有事の診療科医官所要数の違いや医官が希望する科のギャップも存在する.就職後のリアリティー・ショックに似た,現実とのギャップに悩む医官もいる.
 若い医官が部隊にいても,最新医療に接する機会を担保するため,近隣の公立病院等に研修でお世話になっている.近年,その病院から勧誘を受ける場合があり,懸念を抱いている.
 課題山積のなか,阪神淡路大震災やイラクで住民の皆さんが,われわれに期待と安堵の眼差しを向けてくれたことを,忘れないようにしたい.医官のアイデンティティーを明確にし,生涯教育のなかで医官のキャリアパスを考え,後輩医官が夢とロマンを抱く勤務医となれるよう,環境を整備することが,先輩医官としての責務であると痛感している.

(防衛省陸上幕僚監部衛生部長 陸将補 千先康二)

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