日医ニュース
日医ニュース目次 第1115号(平成20年2月20日)

中医協(1月25,30日,2月1日)
勤務医支援に関して公益側による裁定案を了承

公聴会後,開催された緊急総会(群馬県前橋市内で)
 中医協は,一月二十五日に公聴会と総会が群馬県前橋市内で,三十日に薬価専門部会,保険医療材料専門部会,総会が都内で,二月一日に総会が都内で,開催された.
 平成二十年度診療報酬改定の検討項目については,懸案の五項目((1)診療所の再診料の引き下げ(2)外来管理加算の見直し(3)デジタル映像化処理加算の廃止(4)後期高齢者における初診料引き上げ,再診料引き下げ(5)後期高齢者における外来管理加算の病診統一)に関する合意が得られず,一月十八日に取りまとめられた『平成二十年度診療報酬改定に係る検討状況について(現時点の骨子)』でも両論併記となり,パブリックコメントの募集や地方公聴会での意見聴取が行われることになった.
 二十五日に行われた公聴会では,これまでの審議経過を説明.そのうえで,公益委員が選出した十名が意見を開陳した.
 その後,土田武史会長(早大商学部教授)の「あくまでも議論を尽くしたうえで合意したい」との意向で,急きょ,開催された総会では,改めて,意見が対立している三点(再診料,外来管理加算,デジタル映像化処理加算)について,診療・支払両側が意見を表明.結局,両者歩み寄れず,最終的に「公益側の裁定に任せる」ことになった.土田会長は,勤務医問題の解決に必要な予算と,診療所から病院へ移行する必要のある財源額の算出を中医協事務局に依頼した.
 三十日の総会では,勤務医問題解決に必要な予算と財源移譲額等に関する資料「宿題事項について」が提示された.
 それによると,産科・小児科・病院勤務医対策に必要な額は約千五百億円(ハイリスク妊産婦,救急搬送の評価:百五十億円弱,小児専門病院の評価:五十億円強,外来を縮小する中核病院の評価:百五十億円弱,事務補助職員の配置の評価:三百五十億円強,手術等技術料の適正な評価:六百億円,その他,医療安全対策,院内検査,夜間休日分担等:二百五十億円強)で,医科プラス〇・四二%相当の一千億円強のほかに追加的な財政支援四百億円強が必要.このうち,すでに合意された「検査判断料の引き下げ」「軽微な処置の初再診料への包括化」で二百億円強を捻出.残りを捻出するために考えられる選択肢として,(一)再診料(一点:百二十億円),(二)外来管理加算(二百四十億円),(三)デジタル加算(百億円)─が示され,さらに診療科別のアンバランスの補正を考えると,各科に戻す財源が必要になることから,(二)と(三)で二百億円程度になるとの説明があった.
 土田会長が,改めて診療・支払両側に歩み寄りを要請したが,意見は平行線のまま合意に達せず,会長より,公益側による裁定案が示され,診療・支払両側とも受諾することになった.
 具体的には,【一】再診料(診療所)は引き下げない,【二】後期高齢者の初診料引き上げについては,再診料の引き下げと合わせて考えるものであり,平成二十年度改定では行わない,【三】病診格差是正のため,(一)病院(二百床未満)の再診料を引き上げる,(二)後期高齢者における病院・診療所の外来管理加算を五十二点に統一,【四】不足財源のシフトは,(一)外来管理加算の見直し,(二)デジタル映像化処理加算を所用の経過措置を設けたうえで廃止―で賄う.
 土田会長は,(1)国民の納得(2)医療現場の納得(3)診療報酬という技術的なツールを使いながら社会の要請に応える―という三点から判断した.財源確保の必要性については,病院勤務医対策という社会的要請に応えるためにも,さらなる財源シフトが必要なことから,診療側委員には,最大限の協力を求めたと説明.
 再診料の引き下げに手をつけない理由としては,「軽微な処置の初再診料への包括化」と「外来管理加算の見直し」は,実質的には再診料の引き下げにつながるものであり,小児科など,すべての診療科に影響が及ぶことを考慮したとの考えを強調した.
 また,今回は再診料の見直しは行わないが,初診料,再診料のあり方と,その役割などについて,次回改定の際に検討することを今回の答申の付帯事項とすることになった.
 二月一日の総会では,十三日の答申に向けて,「平成二十年度診療報酬改定における主要改定項目について(案)」の具体的な議論が行われた.
 「外来管理加算の意義付けの見直し」の項で,具体的な内容として「提供される診療内容」が四例示され,おのずと五分かかるもの,とされた.また,薬だけの投与の場合は算定できないようにしたいとの説明があった.これに対して支払側より,「そのようなファジーなことで二百億円の財源が捻出されるのか」との懸念が示されたが,土田会長や診療側より,四例をしっかり行うことで,結果的に二百億円が出るのであり,時間を強調してはいけないとの指摘がなされた.
 なお,三十日の総会では,「平成二十年度実施の薬価算定基準等の見直しについて(案)」と「平成二十年度実施の保険医療材料制度見直しの内容(案)について」の報告があり,それぞれ了承された.

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