日医ニュース
日医ニュース目次 第1127号(平成20年8月20日)

診療関連死の死因究明制度創設に係る公開討論会
死因究明制度創設に対する各学会・団体等の意見を交換

診療関連死の死因究明制度創設に係る公開討論会/死因究明制度創設に対する各学会・団体等の意見を交換(写真) 診療関連死の死因究明制度創設に係る公開討論会が,七月二十八日,日医会館大講堂で開催された.総合司会は久史麿日本医学会長,司会は門田守人日本医学会臨床部会運営委員会委員長と山口徹同委員会作業部会長が務めた.主催は,日本医学会.日本医師会,日本病院団体協議会,日本看護協会,日本歯科医師会,日本薬剤師会が協賛した.
 開会あいさつで,久日本医学会長は,一九九四年の日本法医学会「異状死」ガイドライン以来,日本医学会加盟の学会等が,医療事故死問題に関する声明等を発表してきた経緯に触れ,日本医学会としても,第三次試案が出された際に,加盟百五学会への賛否を問う調査結果等から,第三者機関の創設に賛成の声明を出し,「さらに,各学会からの意見を聞く必要があるということで開催した」と述べた.
 つづいて,(一)日本内科学会永井良三理事長が,医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案(以下,大綱案)について,(1)「厚生労働省・法務省・警察庁の間の合意」の範囲・根拠・実効性等(2)医療機関の判断で担当大臣への届出を行わなかった事案に医師法第二十一条の届出違反を問わない(3)遺族が警察へ直接告訴した場合に調査委員会による調査を優先する(4)調査委員会から警察への通知の範囲は「故意・改竄(かいざん)・隠蔽(いんぺい)・重過失」までとする─などの課題を明確化し,議論したうえで,第三者機関の創設を推進すべきとの考えを示した.
 (二)日本外科学会本眞一理事は,医療安全調査委員会は,処罰を目的とするものではなく,医療関係者が中心となって運営されることから,刑事処分については,十分謙抑的であろうとの考えを示した.今後の方向性としては,医学界が団結し,事実的な組織として医療安全調査委員会を創設し,さらなる議論を進めていきたいとした.
 (三)日本救急医学会堤晴彦理事は,「日本救急医学会『診療行為関連死の死因究明等の在り方検討特別委員会』による見解」を提示し,議論が尽くされていないとして反対の立場を表明.本質的な問題は,医療側にとって理解不能な刑事訴追だとし,明確な基準の重要性を指摘した.また,救急医療の崩壊,防衛医療・萎縮医療への流れに警鐘を鳴らし,今なすべきことは,法と医の対話だと述べた.
 (四)日本麻酔科学会並木昭義理事長は,中立的第三者機関の創設には賛成だが,不透明であいまいな部分や法的裏付けのない事項があるとし,「WHO医療安全に関するガイドライン」の七項目((1)免責(2)秘匿(3)独立性(4)専門家による分析(5)迅速性(6)システムの検定(7)対応)と比べながら問題点を挙げ,検討を要するとした.
 (五)木下勝之日医常任理事は,日医の「医療事故責任問題検討委員会」や厚労省の「診療行為に関連した死亡の死因究明の在り方に関する検討会」で,医師法第二十一条問題の解決のための検討を行い,法務省・警察庁と折衝を重ねて,大綱案が発表された経緯を説明.「医師法第二十一条の改正と医療安全調査委員会設置法(仮称)の法制化なしには,医療事故死に対する刑事訴追の誤った方向性を止めることは出来ない」として,意見を集約しつつ,一歩ずつ進めていきたいと主張した.
 (六)全日本病院協会西澤寛俊会長は,病院という組織を管理する立場から,「原因究明・再発防止による医療安全の確保」(調査権限)と「過失責任の有無の判断」(処分権限)は,別組織で行うべきと提言.ただ,全日病のみならず日病協等でも,趣旨には賛成だが,内容への意見集約はされておらず,議論を深める必要があるとした.
 その後,日本産婦人科学会,日本脳神経外科学会,日本小児外科学会,日本消化器外科学会,日本整形外科学会や病院勤務医,開業医などと総合討論が行われた.参加者は,三百八十一名.

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