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第1129号(平成20年9月20日) |

ワレモコウ

吾亦紅・吾木香と書くバラ科の多年生草木.秋の高原で咲き,暗赤色の丸い団子のように楕円形に,バラ科とはほど遠い花穂がつく.
地下茎は太くて短く,タンニンを含み止血剤として用いられる.
花言葉は「愛慕」.昔から和歌・俳句にも使われ馴染みの植物であるが,最近,某歌手の歌で一躍有名になった.
花の色は紫・こげ茶・暗赤色に見えるが,花が「私は紅色です.小さいですが私を見てください」と訴えているというので「吾亦紅」の字を当てることが多い.
学校関係では,“気がつかないほどの些細なことにも意味がある,子どもは主張している,声に出さない小さな声を聞き取ろう・感じ取ろう”ということで,この花を引き合いに出すことがある.
診療においては,自覚症状を持つ患者さんの方から受診してくるので,つい受け身の気持ちになるが,同じではないだろうか.
病気で気弱になった高齢者が,われわれの小さな一言で心が明るくなることもあろう.
“漢方に使われる根ばかり尊重しないで,小さいけれど紅色の花も見て.私はここにいるの”と訴えるワレモコウの,はかない気持ちが切ない.
秋の十五夜のお月見にススキとともに欠かせない風情がある.
それにしても,今年の夏は暑かった.
(熊) |