日医ニュース
日医ニュース目次 第1131号(平成20年10月20日)

糖尿病患者の受診中断の抑制に関する大規模臨床研究(J─DOIT2)に参加される地域の医師会の募集
研究リーダー富山大学附属病院長 小林 正

 厚生労働省の統計では,全国の糖尿病患者は現在820万人存在し,そのうちの5割は医療機関を受診していない状態であることが報じられている.このような患者から合併症が多く発症することが考えられ,受療中断の抑制が重要である.
 J─DOIT2(=Japan Diabetes Outcome Intervention Trial 2)研究は,受診中断抑制を目的に全国のかかりつけ医とその糖尿病患者を対象とする研究である.すでに4医師会が参加したパイロット研究は平成19年の暮れに終了しており,その結果に基づき修正されたプロトコールによる大規模研究が平成21年の初頭から開始される.
 今号では,パイロット研究での結果の概略と大規模研究への参加募集を医師会の皆様にご案内するので,奮って応募願いたい.
1.パイロット研究の結果概略
 4医師会(診療支援群;足立区,君津木更津,通常診療群;砺波・南砺市・射水郡,和泉市・泉大津市)の「かかりつけ医」を対象に,電話にて患者に受診促進と療養支援を行う.また,かかりつけ医には糖尿病診療にて行うべき診療行為についての診療達成目標ITシステムによるフィードバックを行う群を介入群,通常診療を行う群を通常診療群として,1年間CRC(治験コーディネーター:Clinical Research Coordinator)によるデータを収集し,以下のような成績を得た.
 (1)受診中断については,診療支援群で中断はより抑制されたが,有意の差には至らなかった.20〜40歳代の比較的若い男性で血糖コントロールが十分にされていない場合,受診中断率が高いという結果が得られた.
 (2)行動変容ステージについては,食事変化として,診療支援群で維持期の患者の割合は研究前が10.2%であるが,研究後で20.5%と増加し,通常診療群で前が9.4%,後が12.4%と変化が少なく,有意に介入群で維持期の患者の割合が増加していた.運動変化ステージでも同様に,介入群で維持期の患者の割合が増加していた.
 (3)かかりつけ医における診療達成目標に関しては,12カ月の観察期間中,9〜10カ月から,かかりつけ医に結果をフィードバックした結果,眼科への紹介,血圧測定,血清脂質の測定など総合計13項目では,達成率が55%程度であり,診療支援群では終了時に通常診療群に比し,有意に上昇した.尿中アルブミンの測定に関しては,その達成率は低く10〜15%であり,終了時には診療支援群で上昇していた.
 以上の結果と研究の実効性を検証し,試験評価委員会での検討を経た後,以下に示すように医師会数,患者数ともに増加した大規模研究に入ることが認められた.
2.大規模研究の概要と研究参加の医師会の公募
 (1)目的
 地域の医師会に所属するかかりつけ医を対象に,「糖尿病診療支援」を実施し,かかりつけ医に通院する2型糖尿病患者の受診中断率,診療達成目標遵守率を改善する効果を検証することを目的とする.主要評価項目を,受診中断率とし,副次的評価項目を,診療達成目標遵守率,患者中間アウトカムとする.
 (2)研究デザイン
 「26医師会」を診療支援群と通常診療群の2群に割付(クラスターランダム化比較試験),1医師会20名程度の医師の参加とし,1医師会300名の患者の参加登録を見込む(合計症例数7,800名).
 (3)診療支援群に提供されるサービス
 図1に示すように,コールセンターあるいは糖尿病療養指導士から選択する.
 (4)医師会,かかりつけ医の役割
 医師会;(1)20名の参加かかりつけ医の募集・登録(2)糖尿病医療ネットワークの構築(糖尿病,眼科,腎臓の専門医)(3)事務局業務.
 かかりつけ医(両群共通);(1)被験者の同意取得から登録までの作業(2)CRCのデータ収集の協力.
 かかりつけ医(診療支援群);(1)療養指導の指示(登録時および変更時)(2)担当する全被験者の受診状況報告(毎週FAXで連絡)(3)診療達成目標システムによるフィードバックの内容確認と被験者への配布(4)受診中断時の受診勧奨(コールセンターからの連絡が無効の場合). 
 (5) 参加条件
 患者;(1)2型糖尿病患者(基準は(a)日本糖尿病学会の診断基準を満たす場合,(b)他院で2型糖尿病と診断され,当該かかりつけ医に紹介された場合,(c)糖尿病薬(経口,インスリン)による治療を受けている場合のいずれか),(2)40歳以上,70歳以下(65歳に変更される可能性有).
 かかりつけ医;(1)試験対象エリアの医師会に所属し,かかりつけ医として活動する開業医であること(2)糖尿病指導医,または糖尿病専門医でないこと(3)登録期間中に少なくとも10名の2型糖尿病患者の同意を得られる見込みがあること.
 医師会(複数の医師会のジョイント形式での参加も可);(1)20名以上の医師の研究への参加が可能(2)医師会全体で300名程度の患者登録が可能(3)かかりつけ医を中心とした糖尿病専門医,眼科専門医,腎臓病専門医の紹介・逆紹介を可能にする「糖尿病医療ネットワーク」を構築できること.  
 (6)研究スケジュール
 以上のように,J─DOIT2の大規模研究はパイロット研究の後を受け,図2に示すようなスケジュールで大規模研究を開始する予定になった.参加希望の医師会は,奮って応募されたい.
 研究に関する問い合わせはJ─DOIT2事務局(E-mail:doit2@med.u-toyama.ac.jp),募集については国際協力医学研究振興財団ホームページ(http://www.pimrc.or.jp)を参照.

糖尿病患者の受診中断の抑制に関する大規模臨床研究(J─DOIT2)に参加される地域の医師会の募集/研究リーダー富山大学附属病院長 小林 正(図)

糖尿病患者の受診中断の抑制に関する大規模臨床研究(J─DOIT2)に参加される地域の医師会の募集/研究リーダー富山大学附属病院長 小林 正(図)

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