日医ニュース
日医ニュース目次 第1133号(平成20年11月20日)

高齢者の入浴事故について

 朝晩涼しくなってきたこの頃,紅葉の便りに加えて北国からは雪が舞いだしたというニュースも届いている.キンモクセイの芳香も終わったこの時節になると,今年も入浴事故についての注意がそろそろ必要となってくる.
 入浴中の死亡事故は,年間の交通事故死よりも数が多いとも言われる.その多くが,冬場の人目の少ない浴室において起こっているということは,清潔好きで,湯船での入浴を好む日本における習慣と切り離せない.
 同時に,本格的高齢社会を迎えたこの国においては,医療や介護の現場からも継続的に注意を喚起していく必要がある.
 何と言っても,温度差の大きくなる冬場でも脱衣所でいきなり裸になったうえで,「しっかり首まで湯船につかる」とか,「体が十分温まるまで五十数えて」など,循環系に大きな負荷となる入浴様式を,疑問なしに幼時から実行してきた国民が多いわけであるから.
 さまざまな立場から注意項目が発表されているが,ここでは日本医学会に属する日本温泉気候物理学会が提唱している八原則を転載する.
(1)四十二度以上の湯には入らない
(2)飲酒後は入浴しない
(3)早朝の入浴は避ける
(4)入浴前後に水分を補給する
(5)入浴水位は胸までとする
(6)更衣室と浴室の温度差をなくす
(7)家族に知らせる,一人で入らない
(8)浴槽の蓋(ふた)を胸の前に置き,溺水を防止する
 救急医療の手前で,いわゆる「避けられる死(preventable death)」をしっかりと予防する意味で,参考にしていただければ幸いである.

(常任理事・石井正三)

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