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第1137号(平成21年1月20日) |

大統領の受難

イラクを電撃訪問したジョージ・ブッシュ米大統領が,記者会見中にイラク人記者から靴を投げつけられるシーンがニュースで繰り返し流れていた.
イラクのマリキ首相の隣に立ったブッシュ大統領目掛けて,イラクのテレビ局の記者が,五〜六メートルの至近距離から,自分の履いていた左右の靴を投げつけた.二投ともあんなにうまく避けなければ,大統領の顔面に間違いなくヒットしていただろう.
コントロールの良さにも驚いたが,大統領の軽い身のこなしにも正直驚いた.いざという時のために,身を避ける訓練をしているのだろうか.
「別れのキスを受け取れ,この野郎」と罵声(ばせい)を浴びせながら,記者は靴を投げつけた.
靴底で踏まれることは,アラブ世界では最大の屈辱と考えられているそうだ.
バグダッドが陥落し,サダム・フセイン政権が崩壊した時,市内のフセインの巨大な銅像が次々と倒され,多くの市民が靴底で像を踏みつけていた映像が思い浮かぶ.靴を投げつけた記者は,今や英雄的存在になっているらしい.
ブッシュ大統領は,しばらく苦笑いをした後にこう言った.「今の靴のサイズは10だったよ」
カリフォルニア州知事のシュワルツェネッガー氏は,遊説中に卵を投げつけられた時,笑顔を崩さず,「ベーコンもよこせ」という名台詞(めいせりふ)を残した.
失言しては謝っている某総理大臣も,もし何か投げつけられた時の気の利いた台詞は考えているのだろうか.
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