日医ニュース
日医ニュース目次 第1141号(平成21年3月20日)

勤務医のひろば

沖縄県における「県立病院のあり方検討」
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター院長 下地武義

 公立病院の崩壊の危機が叫ばれるなか,ここ沖縄県でも県立病院のあり方検討部会が設置され,経営形態をいかにするかが議論されている.設置の一番の理由は,いかんともしがたい赤字問題である.累積赤字二百数十億円,不良債務三十億円余り,不良債務率が二年連続で一〇%超と,総務省から起債を受けられない状態に陥りかけている.
 このようななか,県からの繰り入れ金が七十億円になろうとしており,県知事が問題視する重要事項の中に入ってしまった.財政状態の良くない沖縄県において,知事サイドから何とかしろと指令が出てきたのは当然の帰結ではある.
 現時点でのあり方検討部会の結論の方向は,県立六病院をひとまとめにした独立行政法人化である.平成二十年十一月十八日の会議で,このように結論付けようとした際に,オブザーバーで出席していた六病院長が一斉に反発した.このことがマスコミで大きく取り上げられ,以後,県立病院の行方として連日のごとく報道されている.
 沖縄県立病院は診療圏ごとに設置されており,それぞれの地域で救急医療を中心に,地域中核病院として重要な役割を果たしている.中部病院において,昭和四十年代前半より開始された,米国をモデルにした臨床研修制度は,沖縄県の文化にまで昇華しているとの高い評価である.この研修制度の下,多くのプライマリ・ケア医の養成が行われ,離島医療支援の中核をなしてきた.その制度の下に,厳格な救急医療理念の適応を全医療人に浸透させてきたお陰で,沖縄では急患を拒む,“受け入れ不能”のニュースはお目にかかったことがない.二病院が周産期医療センターを擁し,重症の患児を受け入れるNICUを運営している.
 現場のスタッフとしては,県立病院独法化で,培(つちか)ってきた医療,特に政策医療の継続ができるのかという点に疑問があり,慎重な議論を要求してきたが,一月十四日のあり方検討部会で全県立病院の独法化が決定された.総務省から出された公立病院改革プランへの忠実な追従で,経営の観点のみから議論してよいのかと,不採算医療を担う県立病院スタッフからの素朴な強い疑問である.

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