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第1151号(平成21年8月20日) |

50年ぶりのカメラ

小学校六年生のとき,父に初めてカメラを買ってもらった.
手にした三十五ミリのハーフサイズのカメラは,普通は十二枚しか撮れないフィルムで,倍の二十四枚の写真を撮ることが出来た.
発売当初はマニュアル撮影しか出来ないシンプルなカメラだった.後に露出計が内蔵され,オートで撮れるようになり,ペンシリーズとしてオリンパス社の名機の一つとなった.
その懐かしの銀塩フィルムカメラが,デジタルになって五十年ぶりに復活することを知った.思わずネットで予約してしまった.
小学生時代,教わったとおりに絞りとシャッタースピードを決めて撮った.わくわくしながらフィルムを現像に出した.失敗のないものだけを選んでプリントしてもらう.子どもにしてはとても上手に撮れていると褒められ,その気になった.
といっても,小学生のお小遣いではバシバシ撮る訳にもいかなかった.修学旅行で,行ったところの記録をしたくて風景ばかりを中心に写した.しばらくして,見物してきたはずのいろいろな場所の記憶が意外にも薄いことに気がついた.写真を撮ることに気を取られ,自分の目で見ていなかったからであろう.
結婚してからも同じ失敗をヨーロッパ旅行でしてしまった.
「あなたは写真ばかり撮っていて,あの旅行は一人で行ったようなものよ」と,女房からいまだに言われる始末である.当時のカメラはニコンで広角と中望遠の二本の交換レンズを持ち,それに八ミリカメラまで加わったからたまらない.
復活したオリンパスペンを懐かしんでいるご同輩が周りにも結構いることを知った.また嬉しくなった.
(No.8)
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