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第1169号(平成22年5月20日) |
新役員紹介
─就任にあたっての抱負と担当業務を紹介─

今村 定臣 常任理事
母子保健,医事法制,先端医療,治験
医療崩壊の象徴的領域である周産期医療は,この四年の間に産科医療補償制度の創設,妊婦健診の公費負担の拡大(二回→十四回),出産育児一時金の増額(三十五万円→四十二万円),周産期医療センターの整備,診療報酬上の評価(ハイリスク分娩,ハイリスク妊娠,NICU,GCU等)もあり,医療再生の萌芽が見られるようになってきました.今後は,出産育児一時金の適正額へのさらなる引き上げ,現金給付制度の堅持に全力を尽くします.
また,医師会の公益法人制度化問題に伴い生じている母体保護法指定医の指定権者については,法改正を視野に現行の都道府県医師会の権限を死守します.
医事法制の分野では,懸案の医療基本法制定に向けた環境の整備が課題です.医師法,医療法,健康保険法など,医療にかかわる法律の上位に位置する「医療の憲法」を日医が主導して策定することは,日本の医療の根幹を,日医が担い続けるために非常に重要なことです.
治験促進センターの担当としては,特に地域の医師会が取り組んでいる治験事業が円滑に運営されるように最大限の支援を行っていきたいと考えています.
そのために,地域の現場の率直な意見を聴かせていただき,迅速かつ丁寧な対応を心掛けていきます.

三上 裕司 常任理事
精神保健,医業経営,勤務医,介護保険・福祉,生涯教育
医療と介護が切れ目なく提供され,高齢者が安心して暮らせる地域づくりが求められており,平成二十四年の診療報酬と介護報酬の同時改定は,これを実現するための大切な節目と考えます.
経営安定化のためのプラス改定要求は当然として,補足給付や情報の公表制度,さらには療養病床再編など,介護保険制度の不合理なところについては,介護保険給付費分科会や介護保険部会の場で是正を強く求めてまいります.
勤務医の過重労働や医師不足は医療崩壊の直接的原因であり,解決すべき課題でありますが,そのための議論を深めるには勤務医の意見が反映される体制整備が必要です.勤務医委員会や臨床研修医部会などの会内委員会の活性化ばかりでなく,代議員制や選挙のあり方を含めた日医の組織改革も必要になってきます.
日医の生涯教育制度は今年度から三年間に三十単位三十カリキュラムコードの取得で認定される制度に大きく変更されました.
しかし,拙速すぎたため,現場が混乱しているとの指摘が多く寄せられていることから,これを真摯に受け止め,日医の生涯教育制度が国の総合医構想に利用されないよう,また,専門医を目指す勤務医の参加意欲を低下させないように,早急に見直しを行いたいと考えています.

石井 正三 常任理事
救急医療,国際,日医総研,図書館
救急医療に現れている問題は,日本の地域医療に破綻懸念が濃くなっている現状を明瞭に反映しています.しかし,地震などの大規模災害が突発し,テロの懸念も高まっている今日,平時のセーフティネットから災害有事までシームレスに対応出来るシステムづくりとスキルを高める努力が国民から求められています.
医療担当者としては,プロフェッショナル・オートノミーに基づく自律的な研修や活動を推進すると同時に,日医が専門職として,政治・行政に対して積極的に提言することによって,医療の最前線の努力をサポートし,その対応力と地域を挙げて質を確保出来るような施策が実行されるように努力します.
フロントラインから,後方病床そして在宅のサポートまで,生き生きとした地域医療の再生を見ることなしには救急医療の維持は出来ません.
また,前期の救急災害委員会の答申において提言されたJMAT(日本医師会災害医療チーム)と総称される,災害対応のDMATと地域医師会をつなぐ活動という概念を具現化することも,極めて大きな命題と感じています.
日医総研は,いくつかのパラダイムがコンフリクトを起こしている政治・経済の現状においては,一層その果たすべき役割が増しています.データベースセンターである図書館機能の充実と相まって,今後さらに日本のヘルスマネジメント全体を守るために,その機能を高めていくよう,尽力していきたいと思います.
国際関係に目を転じると,各国において,医療制度,コスト,人的資源などの問題は,喫緊の課題になっています.世界医師会(WMA)とアジア大洋州医師会連合(CMAAO)の活動を基点とした双方向性の情報と交流を通して,わが国の医療にも大きな影響を及ぼすような流れをいち早くつかんで対応する能力を高めることも求められています.
日医の会務の一端を預かる職責を,しっかり果たしていきたいと考えています.

今村 聡 常任理事
総務,財務,年金・税制,産業・環境保健,会員福祉,会員情報
引き続き常任理事として選任いただき,その責任の重さを改めて実感しています.
主担当に関して所信を述べさせていただきます.総務,財務に関しては,会の内外に対して透明性の高い運営とともに,他の役員の活動がいかんなく行えるような支援,事務局の強化を心掛けていきます.また,新公益法人移行の準備を着実に進めていきます.
医師年金は,会員の老後の生活を支える重要な事業であり,今後も従来どおりの運営が続けられるよう尽力します.税制は,社会保険診療の事業税および消費税非課税問題が最大の懸案事項となります.いずれも医療機関の健全経営には重大な影響を及ぼす問題でありますから,全力で対応に当たっていきます.
産業保健に関しては,前年度より地産保事業の見直し等により,都道府県・郡市区医師会に多大なご迷惑をおかけしたばかりにもかかわらず,次年度以降の同事業について再度の見直しが国で検討されています.現場に混乱が生じないよう,国に要望していきます.また,地球温暖化対策基本法制定により,環境税や排出権取引の制度が導入された際,医療機関に大きな経済的負担が発生しないよう,同法案の細部に注視していきます.
会員福祉に関しては,各種割引制度など,会員の具体的メリットを制度的に構築していきます.

葉梨 之紀 常任理事
医賠責,有床診療所,共同利用施設,医療廃棄物
今回の役員選挙は,民主党新政権の誕生と不況による深刻な社会情勢から日本の政治が変わりつつあり,日医の会員が,従来の医師会からの変化を望んだ結果と思われます.変革を迫られた日医は,これから新しい方向を模索しなくてはなりませんが,今まで築き上げてきた貴重な経験があり,これを進化させていかなければなりませんし,また,全く発想を変えて新しい方向をいくつか見つける可能性もあります.
われわれは医学を学び,自然科学を勉強してきましたが,自由で柔軟な発想がないと新たな進歩は望めません.役員の先生方は,それぞれさまざまな経験と知識,考え方を持っていますので,これからの二年間が楽しみです.また,日医には日医総研という素晴らしい頭脳もあり,資料も蓄積されているので,期待出来ます.
私の主担当は,医師賠償責任保険(医賠責),有床診療所対策,医師会共同利用施設,医療廃棄物となりました.医賠責は故武見太郎会長の発案で出来たと言いますが,医師が日常診療に安心して従事出来る保障とならねばなりません.絶えず全国からトラブル案件が出されますので,審査委員会が毎週二回行われ,法律家や保険会社も参加しています.
有床診療所はここ二十年間で三分の一に激減しました.毎日二〜三カ所閉鎖されていて,年間八百〜千カ所つぶれています.二十四時間入院患者を抱え,医師一人で頑張っている有床診療所は,過疎地では文字どおり地域医療の中心となっています.都会地でも軽症・中等症の救急を扱い,在宅医療や看取りを行い,さらに重症を扱う基幹病院の後方入院施設として貴重な存在であり,一刻も早くこの経営が成り立つようにしなければなりません.そのために,全国有床診療所連絡協議会と連携して行動するつもりです.
全国の先生方にはご協力,ご指導をお願いいたします.

高杉 敬久 常任理事
学術,精度管理,医療安全,医療政策
医療崩壊は,多年にわたる医療費削減の結果でありますが,昨年の政権交代によって医療政策の大きなギアチェンジがなされるものと期待した人は多かったと思います.しかし,今回の診療報酬改定は期待していたものとは大きくかけ離れ,削減の道が止まっただけとしか評価されていません.このような背景のもと,四月一日に行われた会長選挙では,政権政党にしっかりと意見が言える人ということで原中勝征会長が選ばれました.
中国四国医師会連合の推薦で新執行部に入ることとなった私は,医療政策,学術,医療安全,精度管理を担当することとなり,その責任の重さを今まさに実感しております.
特に,医療政策に関しては,国民が安心・安全な医療を受けられるよう,医療のあるべき姿を国に対し提言していきます.また,医療安全につきましては,医療事故ならびに医療訴訟を減らしていくため,医療安全対策の実践とともに,各診療科が安全で安心な医療を提供出来るよう学術・生涯教育の分野においても,ベースとなる教育部分の検討を進めていきます.
私の専門は内科,特に腎・腎不全治療でありますが,黎明期より今日に至るまで,患者さんと心の通う医療を掲げて,精いっぱい歩んできました.これらの経験をもとに,原中会長の方針のもと,医療に関して広がっている国民の不安の解決に向けて,力いっぱい頑張っていく所存であります.

保坂 シゲリ 常任理事
公衆衛生,健・検診,感染症危機管理対策,男女共同参画,女性医師支援センター
日医の男女共同参画の取り組みも,女性が意思決定の場に加わることの出来た今,新たな出発点を迎えました.男女共同参画は,すべての医師の力を結集する職能集団としての日医の新しい姿を作り上げるために最も大切にすべき点の一つでありますが,このことを多くの会員にご理解いただけるように努めます.
女性医師支援について,これまでも国の支援策の方向付けを行ってきましたが,それを継続し,今後は,次の世代の女性医師の育成にも注力していきます.
感染症対策については,まず,国の行う新型インフルエンザについての総括に対し,現場の意見を強く主張し,在庫ワクチンの国による引き取りを実現させたいと考えています.予防接種法の改正議論が始まったところでありますが,この機に国際的に見ても遅れた日本の予防接種政策の根本的見直しを行い,すべての日本の子ども達をVPD(ワクチンで防げる病気)から守る体制を整備するために力を注いでいきます.
新型インフルエンザ等の新しい感染症への迅速な対応体制の構築,特定健診・保健指導の今後の方向性の検討,がん検診の受診率の向上をはじめとして,感染症対策,公衆衛生,健・検診に山積している課題についてスピード感をもって,かつ丁寧に対応していく所存であります.

石川 広己 常任理事
広報・情報,学校保健,国民生活安全対策,調査統計
民主党は,先の衆議院選挙のマニフェストにおいて,日本の社会保障を大きく変えるとしていましたが,社会保障の基盤は国民の期待の大きさに比して,いまだに大きな変化を見せておらず,誰もが待ちくたびれています.
このような状況において,日医に課せられた使命は,役員一丸となって崩壊しかけている社会保障としての医療を立て直すことにあると考えます.
今回私も役員の一人に選任され,きわめて重要な広報・情報という部門を担当することとなりました.激動の政治状況と新執行部の活動構築のなかで,会員のみならず,日本の医師層,そして国民に新しい方向性を伝える役目は極めて大きく,渾身の力を振り絞ってその任に当たる所存です.具体的には,正確で適時な情報を,今後事務局等の力も得て配信していくとともに,勤務医の方たちの医師会参加を促すような方向での広報活動も展開していきます.
学校保健については,専門が小児科であったこともあり,十二年前に医師会活動を開始した当時から私の中心課題となっています.この分野は,医師会活動にとっても,また日本の教育全体にとっても,極めて重視すべき課題であり,今までの地区医師会での経験を基に,その任を果たしていきます.
医療のIT化については,日レセや日医認証局などの問題に関して,さまざまな形で提案を行い,日医のIT戦略の方向性を明らかにしていきたいと考えています.

藤川 謙二 常任理事
労災・自賠責,倫理,健康スポーツ,医療関係職種
労災関係では,労働者のうつ病対策,自殺防止問題,時間外超過勤務問題,労災認定,後遺症認定問題など,今後解決が必要な問題が山積しています.
自賠責保険問題では,健康保険代用時の求償問題が未解決です.医療類似行為による長期間の通院治療も以前からの課題となっています.人身傷害補償保険の適正使用の件も未解決です.
倫理問題は,生命倫理懇談会での質の高い高度な議論により,今後とも日医の高い見識を世に示さねばなりません.学識経験者の方々のご指導を仰ぎながら,医師会員のみならず,日本国民の指標となる提言がなされることを期待しています.
健康スポーツについては,国民の健康維持のための正しい指導の出来る医師の養成と,日本体育協会や日本整形外科学会との協力連携による,健全な健康スポーツ医制度の充実に努力する所存です.
医療関連職種では,特定看護師問題について,厚生労働省と日本看護協会との議論のなかで,日医会員および国民の納得出来る結論に導ければと考えています.
看護師養成学校の補助金削減問題についても,財務省との交渉も含め,厚労省と協調して,財源確保に努力する所存です.

鈴木 邦彦 常任理事
医療保険,薬事,地域医療,病院
医療保険,地域医療,病院,薬事一般を担当させていただくことになりました.
昨年十月末より,茨城県医師会から中医協委員となっておりましたが,今後は日医の担当者として出席することになります.今後,中医協では,今回の改定結果の検証や,附帯意見についての討議,さらに二年後の同時改定に向けた議論が交わされます.皆様のご意見をぜひ日医までお寄せください.
さて,今回の会長選で,私も北は吹雪の東北から,南の桜や菜の花が満開の九州まで訪問させていただきました.平等な国民皆保険制度を守るために,全国各地で地域医療に献身される先生方の姿に深い感銘を覚えましたが,そのなかで,秋田の先生が話された,「自分たちの世代までは何とかやれるが,開業医,勤務医とも後継者がいない」という言葉が強く心に残っています.地域医療の確保こそ最優先の課題だと改めて思いました.
また,よく「日医は開業医中心の団体だ」と言われますが,日医がすべての医師の代表であることを国民に理解していただくためにも,病院団体との連携をさらに強化していきたいと考えています.強い日医をつくるための改革への協力を心よりお願い申し上げます.
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