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第1171号(平成22年6月20日) |
中医協(5月26日・6月2日)
入院中の患者の他医療機関受診の問題で医療課長通知見直しへ

中医協総会が五月二十六日,六月二日の両日,都内で開催された.
六月二日の総会では,入院中の患者の他医療機関受診の取り扱いについて議論が行われ,出来高病棟の場合における他医療機関受診の際の投薬の問題については,厚生労働省から出された医療課長通知を見直すことになった.
入院中の患者が他の医療機関を受診した場合の取り扱いについては,従来,特定入院料等算定病棟についてのみ規定されていた.すなわち,入院料は七〇%減額され,他医療機関では専門的な診療科に特有な投薬の費用(処方料,処方せん料,薬剤料等)や注射の費用(注射料,薬剤料等)は算定(請求)可能となっていた.しかし,本年四月の診療報酬改定により,出来高病棟の場合にも適用され,他医療機関では処方料,処方せん料,外来化学療法加算が算定不可となり,薬剤料についても受診日に限って他医療機関で請求し,受診日以降の薬剤料については,入院医療機関で請求のうえ,他医療機関との合議により精算するという複雑な取り扱いとなった.
また,その場合,入院医療機関において入院基本料が三〇%減額されることについても根拠が明確でなく,医療現場からは,その改善を求める要望が多く出されていた.
鈴木邦彦常任理事は,五月二十六日の中医協総会に引き続いて,入院中の患者の他医療機関受診の取り扱いの問題について言及し,「この問題は,原則,対診であるが,専門医療機関から往診に来てもらえず,入院医療機関の職員が付き添って他医療機関に連れて行く状況があり,特に精神病院や有床診療所の経営を圧迫している.そのため,医療現場からは多くの不満や苦情が寄せられており,各地域で開催されている協議会においても主要な議題として取り上げられている」と現状を説明.
そのうえで,この件は,(一)入院基本料が三割減額になってしまうこと,(二)外来での薬剤費を入院医療機関が請求することの不合理―という二つの問題があるとし,(一)については実態を調査したうえでの見直しを,また(二)については医療課長通知を改正することで対処出来ることから,早急な見直しを,それぞれ求めた.
二日の議論では,(二)の問題に関して,診療側から,「医療財源への影響があるわけではない」「医療機関ばかりでなく,患者のためにもなる」など,鈴木常任理事の見直しの要望に賛同する意見が相次いで出された.これらの意見に対して,支払側も理解を示したことから,本年三月五日に出された厚労省保険局の医療課長通知を改正することになった.
なお,(一)の問題については,次回の中医協総会で引き続き議論していくことになっている.
そのほか,当日は平成二十二年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査についても議論が行われ,以下の五つの調査(「救急医療等の充実・強化のための見直しの影響調査」「外来管理加算の要件見直しおよび地域医療貢献加算創設の影響調査」「歯科技工加算創設の影響調査」「後発医薬品の使用状況調査」「明細書発行原則義務化後の実施状況調査」)を実施することが決定した.
今後は,診療報酬改定結果検証部会の下に設置される「調査検討委員会」で,具体的な調査設計および集計・分析方法の検討が行われることになる.
これに先立って開催された五月二十六日の総会では,診療側委員連名により,次期診療報酬改定に向けた今後の検討課題に関する提案が示された.
今回の提案は,二月十二日の中医協で取りまとめられた答申の附帯意見等に基づいてまとめられたものであり,「『技術』と『モノ』の評価の分離」「病院における複数科同日受診の再診料の算定」など,具体的に検討すべき主な項目と今後実施すべき調査内容が示されている.
鈴木常任理事は,今回の提案に加えて,女性医師が出産などで職場を離れた場合に,現場に復帰することが困難な現状を説明し,その改善策についても,「今後,中医協で検討して欲しい」と要望した.
これに対して,支払側が,「今回の提案内容を検討し,支払側としての意見を述べたい」としたことから,遠藤久夫会長は支払側の意見も踏まえたうえで,引き続き議論していく意向を示した.
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