日医ニュース
日医ニュース目次 第1179号(平成22年10月20日)

社会保険診療に対する消費税非課税制度についての日医の考え

 将来の社会保障の財源として,消費税が注目されるなか,今号では,今村聡常任理事に,医療機関における消費税の負担問題についての取り組みを紹介してもらった.

社会保険診療にかかる消費税

 社会保険診療にかかる消費税が,非課税とされるために生じている医療機関の消費税負担問題については,平成二十三年度税制改正要望でも重点項目として掲げ(参考1),さらに,その要望は四病院団体協議会との連名による要望書別記事参照でも取り上げ,関係各方面に働き掛けを行っています.
 社会保険診療は,消費税非課税のため,患者さんから消費税をいただきません.しかし,医療機関は,社会保険診療を行うために仕入れる医薬品や設備投資などに対して,消費税を支払っています.
 自由診療のように,消費税課税であれば,いただいた消費税から,仕入れにかかった消費税を差し引いた差額を,納付または還付する仕組みとなるため,医療機関に消費税負担は生じません.ところが,社会保険診療の場合は,消費税非課税であるために,仕入れにかかった消費税は,医療機関が負担することになってしまいます.つまり,医療機関が最終消費者になってしまうのです.
 本来,消費税は消費者が負担するものであり,事業者が負担するものではありません.私たちは,この不合理な消費税負担が起こる,現在の制度の見直しを求めています.
 詳細については,日医ホームページのメンバーズルーム(「お知らせ・医師会活動」のなかの「税制関連資料」http://www.med.or.jp/japanese/members/info/contax1910.pdf)に掲載の資料『消費税率アップが,私たち医療機関の負担アップにならないために』をご参照ください(ただし,当該資料の税制要望は,平成十九年当時の要望になっておりますので,ご注意ください).
 なお,平成二十一年度に厚生労働省は,社会保険診療報酬にかかる消費税のあり方の検討について,「税体系の抜本的改革を行う際に検討する」ことを,省として要望しました.税制要望の実現のためには,所管官庁である厚労省に税制要望として取り上げてもらうことが,その第一歩となりますので,その点では前進と言えます.

社会保険診療に対する消費税非課税制度についての日医の考え(図)

消費税導入時から現在まで

 社会保険診療報酬には,これまで,消費税導入時と税率引き上げ時に,消費税分が上乗せされ,これをもって消費税負担問題は解決済みとされてきました(参考2)
 しかし,社会保険診療報酬の本体部分については,数千項目あると言われる診療行為のなかのたった三十六項目に消費税分が上乗せされただけであるばかりか,その後の改定によって,補填された点数は,「項目の包括化」「項目のマイナス改定」「項目の消失」といった形で,既に多くの項目で検証不可能な状況になっています.
 また,元々医療機関が支払った消費税とは無関係の技術料に「上乗せ」されているものもあり,二回にわたる補填が適切でなかったことは日医の調査でも明らかです.この「上乗せ」された補填分から消費税負担を引いた不足額が,いわゆる「損税」と呼ばれるものです.
 そこで,昨年十二月三日に開催された社会保障審議会医療部会において,診療報酬の消費税上乗せ分について検証すべきであるとの問題提起を行っています別記事参照

社会保険診療に対する消費税非課税制度についての日医の考え(図)

薬価にかかる消費税 ─購入時には最低6.8%の値引きが必要

 その一方で,薬価については,「消費税分が上乗せされているのか」というご質問を,しばしば会員の先生方からお受けします.この問題に関しての詳細につきましては,以下のようにQ&A形式にまとめましたので,ご参照ください.

Q1 薬価の算定において,消費税分はどのように取り扱われますか?
A1 例えば「既収載医薬品」の算定方式は,下記の通りです.
新薬価=実勢税抜き納入価格の加重平均値×一.〇五+調整幅(改定前薬価の二%)
 このように,税抜き納入価格に消費税率分を加算したうえに,さらに,調整幅を加算することで,薬価が算定されることとなります.なお,新薬等の薬価算定においても,同様に消費税分が上乗せされています.

Q2 実際の薬の仕入れに際しては,納入価格によっては消費税分や管理コスト分が持ち出しになってしまう場合もあるのではないでしょうか?
A2 薬の仕入れには消費税や管理コストがかかりますので,予(あらかじ)め薬価に対して一定以上の値引き率を確保することが必要です.さもないと,消費税分や管理コスト分が持ち出しになってしまいます.
 〈計算例〉
 薬価百円(消費税上乗せ後)の薬を,六%値引きした九十四円で仕入れた場合は,支払額は消費税分を加えた九十八.七円(九十四×一.〇五)となり,差し引き残一.三円となります.
 一〇〇−九四×一.〇五=一.三
 この場合,見かけ上は逆ざやになっていませんが,調整幅(薬価の二%)を確保出来ていません(一.三<二).
 消費税だけでなく,調整幅も合わせた管理コストを,持ち出しとしないためには,薬価に対して,約六.八%以上の値引きが必要となります.

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