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第1181号(平成22年11月20日) |

日本は大国か

大国とは,ある分野において国際的に大きな影響力を持つ国のことであり,また別の意味でその国の特徴を指して“○○大国”と表現される.
前者でいうなら,日本は昨年までは世界第二位の経済大国であった.しかし後者の意味では,世界一の長寿大国であり,自殺大国である.
二〇〇九年の百歳以上の高齢者は四万人余りであるが,所在不明者が判明しただけで四百人以上との報道があった.年金詐取の事例も摘発されたが,高齢者を取り巻く地域コミュニティーの機能低下には寒々とした思いに捕らわれる.
また,我が国では毎年働き盛りの男性を中心として三万人以上の人が自ら命を絶っている.この数字は二位のアメリカの倍以上である.その自殺率と完全失業率の推移は,グラフ上で見事に一致する.つまり,お金が生死の分かれ目であり,経済状況を反映,社会的殺人とも言われるゆえんであろう.
さらに近年,格差社会が急速に顕在化,日本はアメリカに次ぐ貧困率大国に変貌しつつある.
新自由主義,市場原理主義が世界を席巻し,日本も例に漏れず巻き込まれ,拝金主義,勝ち組負け組と評される殺伐とした社会に漂流しようとしている.
今ここで,国家としての羅針盤をどこに定めるべきか,福祉大国ではなくとも福祉立国を目指すことが,不名誉な大国からの脱却につながるのでは…….
(元)
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