日医ニュース
日医ニュース目次 第1182号(平成22年12月5日)

公的医療保険制度の「全国一本化」を提案

 原中勝征会長は十一月十一日,中川俊男副会長とともに記者会見を行い,「日本医師会 国民の安心を約束する医療保険制度」を取りまとめたことを報告.公的医療保険制度の一本化を目指すことを明らかにした.

公的医療保険制度の「全国一本化」を提案(写真) 原中会長は,「医療が高齢者を切り捨てるようなことがあってはならないとの信念のもとで,高齢者をどのような制度で守れば良いのか,現執行部ではゼロベースで考え直すことにした」と述べ,そのため,日医の歴史をひもとき,歴史に徹底的に学び,「若者から高齢者まで,公平に安心して医療を受けることが出来るようにするためには,全国ひとつの医療保険制度にすべきではないか」との結論に至ったと説明した.そして,これは,「高齢者を手厚く守る」という,これまでの日医の提案と,いささかの齟齬もないとした.
 また,「日医は,地域保険としての一元的運用を目指す民主党案を容認した」との一部報道について,「日医の目指すところは全国一本化であり,その途中段階で,地域保険と職域保険への組み替えを提案しているが,それがゴールではない」とその違いを述べた.そして,現執行部発足直後に検討を開始し,政府の方針や現行高齢者医療制度の見直しの方向性に左右されることなく,別の次元で,真摯な議論を進めてきたことを説明した.
 さらに,現在,グランドデザイン全体の見直しを進めていることにも言及し,次の段階では,医師不足・医師偏在をいかに解消するかという提案も示したいとの考えを明らかにした.
 つづいて,中川俊男副会長が,本提言は,(一)日本医師会のこれまでの医療保険制度改革についての提案,(二)厚生労働省のこれまでの医療制度改革案,(三)医療保険制度改革にむけた論点整理,(四)日本医師会が考えるあるべき医療保険制度─で構成されているとして,概略を説明した後,「日本医師会が考えるあるべき医療保険制度」について解説した.
 まず,すべての国民が,公平な負担の下で,同じ医療を受けられることが公的医療保険制度の根幹であり,それは年齢や地域や所得の違いによる格差のない制度であるとの基本理念を示したうえで,「これまで財政面からの一元化については各方面で検討が行われてきたが,財政調整で抜本的な解決を見出すことは困難であり,いずれかの制度にしわ寄せされ,『皆保険』としての納得感を得られない.そこで,日医は,公的医療保険制度の全国一本化を提案する」とした.なお,ここでは,「一本化とは,制度としてひとつに統合すること」「一元化とは,財政調整により財源面で一体的運用を図ること」と定義している.
 次いで,全国一本化までの道筋を,以下の四つの段階に分けて示し(図を参照),「それぞれの段階ごとに問題点を洗い出し,その対策を講じたうえで,次の段階に進むものとする」とした.


「第一段階 高齢者医療制度も含めた医療保険制度全体の方向性の検討」

 現行の後期高齢者医療制度は,二〇一二年度末に廃止され,二〇一三年度から新たな制度に移行する予定であるが,一般及び高齢者の医療保険制度を一体的に検討し,その方向性が固まった時点で,新たな制度の実施時期を設定すべきと考える.それまでの間は,現行の後期高齢者医療制度を弾力的に運用して対応する.

「第二段階 地域保険の創設と職域保険の段階的統合」

 高齢者医療制度と市町村国保を都道府県単位で統合し,地域保険を創設する.また,職域保険として,共済組合を協会けんぽに統合し,組合健保を段階的に協会けんぽに統合する.なお,高齢者の現役サラリーマンは,希望があれば職域保険等に加入し直すことが出来るようにする.

「第三段階 職域保険の完全統合」

 職域保険(協会けんぽ)に,国保組合を統合していく.ただし,地域保険的な国保組合については,地域保険への移行も可能にする.第三段階から全国一本化までの間は,特に財政調整が重要である.保険料の見直しなどにより,財源面での一体的運用(すなわち「一元化」)を図る.

「第四段階 全国一本化」

 二〇二五年以降を目標に,都道府県ごとの地域保険及び職域保険(協会けんぽ)を全国一本化する.


 同副会長は,統合一本化に向けた課題及び一本化後の課題として,(1)国民健康保険と被用者保険の所得捕捉(2)国民健康保険における保険料賦課方式の統一(3)保険者による予防・健康増進機能の維持(4)医療費抑制,管理医療の阻止(5)事業主負担のあり方─を挙げ,いずれも,基本理念の実現のために避けて通れない課題であり,解決に向けて全力を尽くすとした.
 今後については,本提言を,まずは世に問いたいとしたうえで,政府与党を中心に,精力的に説明し,理解を求めていく考えを示した.
 また,現執行部になって,社会保障等について徹底的に議論した結果,高齢者の医療制度をどうするかという次元ではなく,全世代の医療制度を一体的にどう改革するかということを議論すべきとの結論に至ったことを説明.
 そのうえで,「高齢者を保障の理念で手厚く支える」という理念は,これまでの日医の主張と全く変わっていないことを改めて強調した.

公的医療保険制度の「全国一本化」を提案(図)

日本医師会 国民の安心を約束する医療保険制度(PDF:872KB)

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