日医ニュース
日医ニュース目次 第1186号(平成23年2月5日)

中医協(1月21日)
事業仕分け結果に抗議する意見を蓮舫大臣らに提出へ

中医協(1月21日)/事業仕分け結果に抗議する意見を蓮舫大臣らに提出へ(写真) 中医協総会が一月二十一日,厚生労働省で開催され,行政刷新会議の事業仕分け第三弾の結果に対し,抗議を行うための意見を,蓮舫行政刷新担当大臣ならびに細川律夫厚労大臣に提出することを決定した.
 昨年の十一月十六日に実施された事業仕分けにおいては,「医師確保,救急・周産期対策の補助金等」について,「診療報酬改定で対応可能な事業に関しては廃止する」とされたことから,前回の総会(十二月十五日開催)では,これを問題視する意見が診療・支払両側ばかりでなく,公益側からも出され,中医協として,この結果に抗議する意見を出すことを決定.今回の総会で,その文案等を議論することになっていた.
 当日は,遠藤久夫会長自らが作成した意見案が示され,議論の結果,蓮舫・細川両大臣に意見を提出することとなった.
 意見では,「診療報酬だけで,現在の医療が抱える課題のすべてを解決出来るものではないこと」「一律に診療報酬改定で対応可能な事業を廃止することは,単なる公費から保険料・患者負担への振替に過ぎないこと」を説明したうえで,診療報酬で対応可能であることを理由として,事業を廃止・削減しては,必要な医療を確保することが出来ず,国民の立場からも望ましいものではないとして,事業仕分けに抗議する姿勢を示している.

DRG/PPSへの移行は時期尚早

 総会では,(一)DPCの基本的な考え方,(二)医療と介護の連携─についても議論が行われた.
 (一)では,西岡清DPC評価分科会長が,DPC制度に係る検討経過を説明したうえで,今後の対応に関する論点として,以下の三点((1)精神病棟への対象の拡大(2)一入院当たり算定方式(いわゆるDRG/PPS)への移行(3)調整係数見直し後の医療機関別係数の在り方)を示した.
 (1)に関しては,「いわゆる総合病院の精神病棟における身体合併症を有する精神患者への治療についても,一日当たりの定額報酬算定方式の対象とする」ことについて議論がなされた.鈴木常任理事は,算定対象として検討することに賛成する考えを示したが,この問題については,引き続き分科会でデータの整理・分析をしてもらうことになった.
 (2)について,鈴木常任理事は一入院当たり算定方式では無理に入院期間を短縮させるなどの問題が起きるとして,移行に反対する考えを表明.むしろ,現行の一日当たりの定額報酬算定方式の問題点を改善していくべきであると主張した.
 他の委員からも積極的に賛成する意見は出されず,移行は時期尚早との結論になった.
 (3)については,厚労省事務局から,現在のDPC対象病院を施設の特性によっていくつかの病院群に分類したうえで,現行の調整係数に代わって,報酬改定前二年間の出来高実績データから算出した病院群ごとの平均値を「基礎係数」として設定.こうした見直しに伴う影響を少なくするため,包括評価に「一定幅」を上乗せするといった具体的な対応案が示された.
 これに対して,鈴木常任理事は,中小病院にはさらに厳しいものになると指摘するとともに,医療機関群の分類の議論は慎重に行うべきと主張.議論の結果,対応案の調査・分析を引き続き分科会で実施してもらうこととなった.
 (二)では,厚労省事務局から,在宅医療の現状と課題等に関する説明が行われた.鈴木常任理事は,在宅医療の推進のためには,訪問看護の大幅な充実が必要であるのに,訪問看護師を希望する人材が少ないことを問題視し,教育面からの改善を要求.さらに,今後は,在宅支援病院と在宅支援診療所の連携,二十四時間体制でなくても在宅患者を診ている医師への支援が必要になると指摘し,既存資源を活用する日本型の高齢者在宅システムを作るべきと主張した.

一般診療所の負担軽減で合意

 当日は,そのほか,調査実施小委員会も開催され,第十八回医療経済実態調査の実施案(概要)の議論が行われた.
 今回示された実施案では,前回調査からの変更点として,「調査年を平成二十三年三月までに終了する直近の二事業年(度)とする」「抽出率を病院(五分の一→三分の一)に,一般診療所(二十五分の一→二十分の一)に広げる」「医療経営の実態を詳細に把握するため,平均値以外の中央値,ヒストグラム分析,四十五度分布図等,多様な集計・分析を行う」「地域特性を確認するため,介護保険制度もしくは生活保護制度の区分により試行的に集計する」などの提案がなされた.
 安達秀樹委員は,医療機関の実態を把握するには,一般診療所のような小規模の医療機関のデータも採れるようにしなければならないとして,青色申告を使って収支差額のみを答えれば良いような方法を取り入れることを提案.支払側も負担軽減には賛意を示したことから,その方法についてさらに検討を行うことになった.
 さらに,安達委員は,保険者調査に関連して,柔道整復師の療養費についても一度,把握しておくべきだとして,その実施を要望した.
 厚労省事務局では,当日の議論を踏まえて,次回までに調査票案を作成することとしている.

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