日医ニュース
日医ニュース目次 第1194号(平成23年6月5日)

東日本大震災 現地からの報告(2)
東日本大震災における岩手県医師会の活動

 北国盛岡にもようやく明るい日差しが戻り始めた三月十一日の午後二時四十六分,それは始まった.午後の診療を始めて間もなく大きな地響きとともに,いまだかつて経験したことがない揺れに長時間見舞われた.地震発生直後に電力が停止したため,直ちに携帯ラジオを取り出し,スイッチを入れた.アナウンサーは「三陸沖を震源とする地震であり,津波の襲来が予想されるので避難してください」と絶叫している.言って良いのか悪いのか,幸い盛岡は地盤が固いため,地震による被害はほとんどなく,停電はあったが,水道やガスは確保されていた.
 ラジオからは,「大津波襲来.陸前高田の市街地は壊滅.宮古,山田,大槌,釜石,大船渡が大きな被害を受け,多くの人たちが波にのみ込まれた」という声が響いていた.夜には市内が真っ暗になり,ろうそく,懐中電灯,石油ストーブに頼る不安な時間が経過した.
 岩手県医師会では,地震当日の午後三時三十分に「岩手県医師会災害対策本部」を設置し,情報収集に取り掛かった.午後七時二十分には岩手県警鑑識課から「遺体検案医応援」の打診があり,石川育成会長は直ちに了承.県内の警察嘱託医に出動を要請するとともに,被災地における開業医にも検案協力を依頼した.もちろん,電話などあらゆる通信手段は断絶しており,警察医が被災地に赴いた際に口頭での依頼であった.遺体収容は多い時で一日六百体を超えたため,岩手医大法医学講座の出羽厚二教授に災害対策本部に入ってもらい,長期にわたる検案作業に備えた.
 三月十三日には岩手医大を始めとして,全国各地からDMATチームが現地に入り,避難所での医療活動に就いた.今回の災害は地震による被害よりもその後の大津波による被害が大きく,犠牲となった方々の大部分が水死であり,救急蘇生や外科的処置を要する人たちがほとんどいなかったのが特徴でもある.
 さらには,日医,全国各地からお見舞いの電話と支援の申し出,続々とJMATチームの派遣要請があり,岩手県の対策本部ではその赴任先の調整に追われた.中には大変失礼な対応があったかと思うが,何せ緊急のことであり,紙面を借りて深くお詫び申し上げたい.
 その後,日医から医薬品等の提供を受けることになり,いわて花巻空港へ石川会長と小原紀彰副会長が赴いた.その医薬品等は岩手県を通じて,翌日には岩手医大や被災地の診療拠点に届けられた.
 また,震災直後から岩手県内では燃料不足が続き,連日ガソリンスタンドには給油待ちの車による長蛇の列が出来たが,自分の目の前で「売り切れ」と言われ,トラブルが起こることもあった.このようななか,日医から「医療関係者が優先的に給油出来るガソリンスタンドを指定する」という知らせが入ったが,地元の石油等販売組合が了承せず,実現はしなかった.しかし,普段から信頼関係が築かれていたため,[医療救護班]などは辛うじて給油することが出来,被災地に赴くことが出来た.DMATチームの中には帰りのガソリンまで持参するところもあり,頭が下がる思いであった.
 石川会長は三月十九日には釜石,二十日には宮古,二十六日には大船渡,四月十七日には陸前高田,二十九日には宮古・山田・大槌・釜石に入り,現地の状況を視察するとともに,各医師会長と面談し,今後について話し合った.気仙医師会では武田健会長と村上靜一副会長がお亡くなりになり,大津定子副会長が会長代行を務めることになった.
 四月十四日には日本災害医療ロジスティックス協会が仲介して,ヤンセンファーマ株式会社から大槌町に仮設診療所が寄贈されるという話があり,事前調査隊がヘリコプターでいわて花巻空港に到着,石川会長と懇談の後,現地に向かった.現地視察の結果,適切と認定され,現在建設中である.岩手県と大槌町は大変感謝している.
 岩手県は現在,全国各地からの支援を受けて復興への志を強く持っているところであるが,今後,全国各地からのJMATチームが撤退した後,内陸部の医師会が中心となって開業医主体の「JMAT岩手」を立ち上げ,長期にわたる現地支援を継続したいと思っている.
 最後に,全国各地から寄せられたご厚意やご支援に対し,心から御礼を申し上げたい.

(岩手県医師会副会長 岩動 孝)

県立山田病院周辺の様子
(4月17日撮影)
  自衛隊ヘリより陸前高田市の中心部を望む
(4月17日撮影)
 
 
大槌町に建設中の県立大槌病院の仮診療所
(5月15日撮影)


東日本大震災 現地からの報告(2)/東日本大震災における岩手県医師会の活動(図)

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