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第1198号(平成23年8月5日) |

想定外─日本人的思考回路─

五,六年前「想定内」が「新語・流行語大賞」に選ばれた.
せんだって,「想定内」を連発していた当時の寵児(ちょうじ)が収監され,表舞台から姿を消したが,今年,「想定外」という言葉が頻発されているのはまさに皮肉としか言いようがない.
大震災以後,東電はもちろんのこと多くの原子力関係者から「想定外」の言葉が発せられている.なぜ想定外なのか? 多くの識者の見解は「起こって欲しくないことは起こらないことにする」という日本人的思考回路にその根源を求めていた.
原発の電源が全て喪失するなんて起こって欲しくないから起こらないことにしよう.電源喪失は起こらないから絶対に安全である.事故は起こらないので避難訓練は必要ない.まさに負の三段論法だ.
私の隣村には日本で最初に建設された原子力発電所がある.
十二年前,JCOの臨界事故はマニュアルに従わないという,まさしく想定外の出来事で発生した.
驚くべきことにこの事故以前は東海村では避難訓練は行われていなかったのである.
「我々原子力関係者は,地震,津波,原発事故の三重苦が起こり得ることに目を背け,考えてこなかった」というコメントが今となっては空しく響く.
発災後の東電の対策もまさに日本人的思考回路そのものである.メルトダウンは起こっていないことにしてきたが,二カ月後には認めざるを得なくなった.事故対策から東電を除かなければ終息が遅れるだけである.
想定外のことを想定する思考回路が必要だと自戒している.
(賭)
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