 |
第1199号(平成23年8月20日) |
社会保障審議会医療保険部会(7月21日)
受診時定額負担について議論

社会保障審議会医療保険部会が七月二十一日,都内で開催され,日医からは鈴木邦彦常任理事が出席した.
当日の議題は,(一)部会長の選任及び部会長代理の指名,(二)東日本大震災への対応,(三)治療用装具の療養費に関する受領委任の取扱い,(四)社会保障・税一体改革成案,(五)次回の診療報酬改定に向けた検討,(六)その他―についてであった.審議に先立ち,新任の委員の紹介とともに,新部会長に前中医協会長の遠藤久夫学習院大学経済学部教授が,新部会長代理には岩村正彦東京大学大学院法学政治学研究科教授が互選された.
(二)では,厚生労働省事務局より,震災に関連した医療保険制度における対応として,さまざまな特例措置を実施していることが報告された.
治療用装具の受領委任の取扱い(現物給付化)を検討
(三)では,治療用装具の療養費に関する受領委任の取扱いの案が示された.
治療用装具の療養費は,これまで償還払いであったが,今回の東日本大震災により,一部負担金等の支払い免除を受けている被保険者等の経済的負担の軽減から,平成二十四年二月二十九日まで装具業者による受領委任により療養費を受給すること(現物給付)が出来るとした.こうした対応から,一般の被保険者に対しても,震災の特例に倣って,現物給付化を検討してはどうかとの意見が厚労省に寄せられた.これを受けて検討ポイントが示され,現物給付化の方法として,(1)保険者から装具業者に支払う方法(2)直接支払い制度もしくは医療機関による受け取り代理制度(3)障害者自立支援法に基づく補装具費の支給と同様の事前申請制度―の三つの例が提示された.これに対して,保険者代表の委員から,患者の経済的な負担が軽減されるメリットについては理解出来るものの,不正受給を防止する仕組みが必要との意見が出された.こうした意見を踏まえ,部会長より事務局に対し,次回以降,受領委任の具体案等を示すよう指示があった.
受診時定額負担に反対
(四)については,事務局より,概要の説明とともに,「七月十一日の社会保障改革に関する集中検討会議での細川律夫厚労大臣の『関係者の理解と国民の合意を形成しつつ,この成案に沿って改革を進めていく』との発言から,早ければ来年(平成二十四年)の通常国会に関連法案を提出し,出来るものはなるべく早く施行したいと考えている.そのための議論の場の一つが医療保険部会であり,年内に集中的な議論が必要である」との説明があった.
各委員からは,受診時定額百円負担に対し,批判的な意見が相次いだ.鈴木常任理事は,受診時定額負担の問題点を指摘した上で厚労省に対し,「受診時定額負担は,保険給付の対象かどうか」を質問した.事務局からは,「患者が受ける医療全体を保険給付の対象とした上で,定率負担と定額負担を組み合わせて一部負担金とする,つまり保険給付の中とする」との考えが示された.
また,同常任理事が,医療・介護の提供体制の将来像の例として参考資料で示された図について,六月二日の集中検討会議では,医療提供体制の充実と地域包括ケアの実現において,地域に密着した病院や有床診療所,地域一般病床の活用が示されていたが,成案では,それらの大事な要素が消えシンプル化されている点を質したところ,事務局からは,集中検討会議に提出した参考資料がベースであり,中身に変更はないとの回答があった.今後,集中的に議論が行われる予定.
(五)では,次回以降,具体的な議論をしていくことが確認された.
(六)では,事務局より,「レセプトの電子化の状況と診療報酬の支払早期化について」の報告があった.国保連への請求に関しては,当初,平成二十三年十月請求分より約一週間〜十日程度,診療報酬支払いが早期化される予定であったが,大震災発生の影響で,支払早期化の対応には,もう少し準備期間が必要であることから,平成二十四年三月請求分より支払早期化を実施する予定との説明があった.
|