日医ニュース
日医ニュース目次 第1205号(平成23年11月20日)

第64回日本医師会設立記念医学大会 受賞者の功績紹介

 日本医師会最高優功賞のうち,都道府県医師会長推薦による「医学,医術の研究により医学,医療の発展又は社会福祉の向上に貢献し,特に功績顕著なる功労者」と,その受賞理由を紹介する.(受賞者の功績の詳細は,日医雑誌1月号別冊を参照)

木村 清延 先生(65歳 北海道)
職業性呼吸器疾患の研究に貢献した功労者

 「じん肺例におけるPETの有効性に関する研究」など,職業性呼吸器疾患の中でも粉じんを吸入して生じる疾病に関する一連の研究で,数々の成果を上げた.
 また,厚生労働省の依頼に基づき,モンゴルでワークショプを開催し,同国医師等のじん肺に対する診断・治療レベルの向上に協力した.

藤原 秀臣 先生(68歳 茨城県)
救急・災害医療体制の確立に貢献した功労者

 心電図伝送システムを日本で最初に考案し普及させた他,茨城県内で初めてドクターカーの運用を開始する等,同県の救急医療の充実発展に貢献した.
 東日本大震災では,県及び県医師会としての対応を総括.また,土浦市医師会及び近隣地域の小児専門医が,総合病院土浦協同病院の小児科医師と共に夜間救急診療を行う「小児救急医療オープンシステム」を構築した.

奥野  豊 先生(64歳 埼玉県)
山間部における地域医療体制の整備に貢献した功労者

 開業医として,秩父市及び近隣住民の健康増進に努めるとともに,小児救急体制の整備に尽力した.また,変死事案の検案,被留置者の治療及び健康診断等,警察行政にも多大な貢献をした.
 更に,埼玉県医学会総会に実施責任者として長年関わり,埼玉県医師会員の学術分野における進歩・向上を図った.

井出  研 先生(80歳 神奈川県)
がん検診の普及・受診体制整備に貢献した功労者

 35年にわたり,地域住民に対して胸部X線撮影と喀痰細胞診を車の両輪とした肺がん検診を実施してきただけではなく,電話による相談に応じ,地域住民の健康増進に努めた.
 また,肺がん検診の受診機会を増やすため,講演・教室などによる広報活動の支援を行った.

齊藤  博 先生(62歳 長野県)
感染症予防・対策の構築に貢献した功労者

 広範囲で,かつ多くの医療機関にHIV感染者及び患者の受け入れ医療体制に参画してもらう,いわゆる「長野県医師会方式」による診療ネットワークの整備に尽力した他,19年間にわたり,HIV感染症の実態調査を実施した.
 また,長野県における新型インフルエンザ対策指針及び行動計画の策定等において中心的な役割を果たした.

青木  靖 先生(75歳 岐阜県)
地域医療体制の整備・確立に貢献した功労者

 医師及び医療関係者を対象に講習会・研修会を開催するなど,ウイルス肝炎対策事業に尽力した他,県内の6地区ごとに4分野の専門相談医を設置し,学校・地域保健連携事業の推進に当たった.
 また,平成4年から“児童・生徒の心臓突然死ゼロ”への取り組みを県・教育委員会等へ働き掛け,心臓検診体制(いわゆる岐阜県方式)を確立した.

杉浦 壽康 先生(77歳 愛知県)
小児の保健・医療・福祉の向上に貢献した功労者

 愛知県小児科医会長として,予防接種の広域化推進に努めるとともに,「小児救急医療電話相談事業」を立ち上げ,県内の小児救急体制の整備に取り組んだ.
 また,行政を説得し,「百日咳・ジフテリア・破傷風三種混合ワクチン」の個別接種を愛知県内でいち早く実施し,成功させた.

大城  孟 先生(78歳 大阪府)
医療安全の推進及び医療事故の防止に貢献した功労者

 昭和60年に医事紛争処理特別委員会(現医事紛争特別委員会)の委員に任命されて以来,500件以上の事例に対応する等,医療事故防止及び医療安全の推進に取り組んできた.
 また,平成4年には,最高裁判所より民事調停委員,医事専門委員に任命され,14年間にわたって医療事故事例の調停に携わった.

榎本 泰久 先生(75歳 奈良県)
地域医療体制の整備及び消化器外科の向上に貢献した功労者

 消化器一般外科医として,救急医療体制が脆弱な奈良県南部で,これまでに2,000例以上の手術を行ってきた他,現在も毎年700例を超える胃内視鏡検査を施行し,胃がんの早期治療に貢献している.
 また,病診連携会議を定期的に主催し,病診相互の信頼と理解を深めるとともに,胃がん及び肺がんの読影会を定期的に実施し,検診精度の向上に努めた.

小谷 秀成 先生(78歳 岡山県)
医師会活動を通じて地域医療の充実・発展に貢献した功労者

 岡山県医師会長として,がん検診精度の向上・標準化に取り組むとともに,乳がん検診の認定医制を導入する等,県内のがん対策の進展に尽力した.
 また,小児救急医療電話相談事業を実施する等,救急医療対策の推進に大きく寄与した他,健康保険,国民健康保険事業の育成運営に積極的に協力し,岡山県における国民健康保険の発展充実に意を注いだ.

落久保 幸夫 先生(81歳 広島県)
救急医療体制の確立に貢献した功労者

 年末年始救急医療体制に内科・小児科のみならず,耳鼻咽喉科,眼科の参加を促し,広島市の同体制の充実・発展に寄与するだけではなく,同県下の病院・医院における救急医療体制の確立にも尽力した.
 また,原爆障害対策協議会常務理事として,被爆者医療の発展に寄与した.

福嶋 恒彦 先生(76歳 福岡県)
地域医療体制の確立及び母子保健活動に貢献した功労者

 福岡市博多区医師会長として,「福岡市医師会方式在宅医療システム」と呼ばれる,かかりつけ医主導型の後方支援体制の確立に尽力した.
 また,全国で初めて産婦人科学校協力医として,高校生の性に関する教育,相談事業を展開するとともに,性教育指導セミナー全国大会の主催等を通じて,傘下の医師に産婦人科医が果たすべき指標を示した.

泉川 欣一 先生(71歳 長崎県)
マイコプラズマ肺炎の研究及び地域保健活動に貢献した功労者

 マイコプラズマ感染症の感染病態に関する研究を主に感染症の研究に従事するとともに,アジアマイコプラズマ学会の設立に寄与した.
 その他,結核に関する地域住民への啓発運動,地域保健所との連携によるウイルス感染症の医療機関への情報提供等,地域住民の健康の管理・福祉・介護の充実に取り組んだ.

中村  徹 先生(73歳 鹿児島県)
医師会活動を通じて地域医療の充実・発展に貢献した功労者

 出水医療圏の住民が等しく救急医療,高度医療の恩恵を受けられるよう,出水郡医師会立阿久根市民病院の開設に尽力した他,回復期,維持期へ移行する患者のための後方支援病院が無かったため,療養型病院の開院にも寄与した.
 また,平成4年には医師会立阿久根市民病院付属の高等看護学校を開設するなど,県内の看護師不足の解消に努めた.

糸数  健 先生(79歳 沖縄県)
産婦人科及び周産期医療体制の整備に貢献した功労者

 「がん撲滅」のため,全国に先駆けて,子宮がんと乳がんの集団検診の併行実施に取り組んだだけではなく,日本臨床細胞学会沖縄県支部を発足させ,学術研修会や症例検討会を開催することにより,細胞診検査の向上に尽力した.
 また,平成8年に「南部地区周産期ネットワーク協議会(現沖縄周産期ネットワーク協議会)」を立ち上げ,顧問として病院と診療所間の連携構築の強化に努めた.

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