日医ニュース
日医ニュース目次 第1208号(平成24年1月5日)

平成23年度都道府県医師会医事紛争担当理事連絡協議会
都道府県医師会における医事紛争解決に向けた取り組みを協議

平成23年度都道府県医師会医事紛争担当理事連絡協議会/都道府県医師会における医事紛争解決に向けた取り組みを協議(写真) 平成二十三年度都道府県医師会医事紛争担当理事連絡協議会が昨年十二月八日,日医会館小講堂で開催された.
 担当の葉梨之紀常任理事の司会で開会.冒頭,あいさつに立った原中勝征会長(羽生田俊副会長代読)は,三十九年目を迎える日医医賠責保険制度に対する都道府県医師会の献身的な活動に謝意を示した.
 協議では,日医医賠責保険制度の運営に関する経過報告の後,福井県並びに奈良県医師会から医療事故紛争対策と活動状況についての報告があり,質疑応答が行われた.
 野村元積福井県医師会理事は,同県における医療事故の件数や具体的事例を紹介した上で,医事紛争の解決に当たっては,県医師会で全ての相談を受け付け,医療事故処理特別委員会で協議していることを説明.医療安全対策として,無床診療所向けの研修会を開催し,有床診療所や病院職員にも開放しているとした.
 医療事故への警察の介入については,医療現場と地域住民との信頼関係が傷つく大きな問題であるとし,医療事故評価の第三者機関の設置が十分ではない現時点では,患者や家族に対して,経過や法の仕組みについて説明していくことが重要であるとの見解を述べた.
 岩井誠奈良県医師会理事は,同県の医療の概況を紹介するとともに,医療相談窓口が,奈良県医療安全支援センター,保健所,奈良県医師会,郡市区医師会などに設けられ,看護師や事務員が対応していることを説明.相談の多くは県の医療安全支援センターに寄せられ,医師会への相談は電話対応で済む苦情のレベルであるとした.
 また,「奈良県運営適正化委員会」でも,毎月,医療等の苦情相談を処理しているとし,「苦情内容は多岐にわたるが,このレベルでの地道な対応が訴訟への発展を防ぐ」と強調.課題として,医師会以外の苦情処理部門に持ち込まれた案件の情報共有を挙げた.
 質疑応答では,各県医師会から事前に寄せられた質問と要望について,葉梨常任理事,日医参与の弁護士並びに医師賠償責任保険調査委員会委員長から回答を行った.
 続いて,石渡勇茨城県医師会副会長が,「茨城県医療問題中立処理委員会」の活動について報告.弁護士,学識経験者,市民代表,医師会が参画する同委員会は,患者側と医療側が話し合える場を提供するのが目的で,医療機関の責任の有無や賠償額を決定する機関ではないことを説明.医療・患者側双方から相談を受け付け,調査を経て,専門構成員によるあっせん・調停を行っており,あっせん・調停は一カ月以内に終了するものが最も多く,解決金はおおむね五十万円以下であることを報告した.また,今後の課題としては,中立性の維持や,設立主体と費用の在り方などを挙げた.
 高杉敬久常任理事は,医療事故に関する検討委員会(プロジェクト)が取りまとめた,「医療事故調査制度の創設に向けた基本的提言」について説明.
 医療事故が発生した際,医師法二十一条に基づく異状死体届け出を端緒として,警察による捜査・取り調べが始まれば,関係者は犯罪人扱いをされてしまうとした上で,同提言では,(一)全ての医療機関への院内事故調査委員会の設置,(二)「第三者的機関」による医療事故調査の実施,(三)医師法二十一条の改正─などを求めていると説明した.
 最後に,羽生田副会長が総括を行い,協議会は終了となった.

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.